第323話内部分裂

同じ頃三好家中にも動きが……。




私(村上義清)「三好の三人衆が当主義継を使い義秋となった覚慶を逃した責任を追及し、松永久秀を失脚させたそうな。」


真田幸隆「久秀はそのことをどのように思ったのでしょうか?」


私(村上義清)「どう言う事だ?」


真田幸隆「狼狽したのか想定通りだったのかであります。」


私(村上義清)「いづれ戦うことになることは想定の範囲内であったと思う。三好三人衆にとって困った事態となる覚慶の将軍就任。同じことは松永親子にも言えることではあるが、久秀の機転により覚慶に恩を売ることに成功している。加えて三好三人衆が担ごうとしている義維の子供が将軍に就いてしまうと三人衆の力が強くなることになる。久秀からすれば面白くないことである。どうせ足利家から将軍を出さなければならないのであれば、自分に好意を抱く者を担いだ方が良いとの判断が働いたとは思うが、如何せん義秋の地位が確立される。強大な兵力を有する勢力に担ぎ上げられる前に三好家中から放り出されてしまったのは誤算だったかもしれない。」


真田幸隆「自力で以て三人衆と戦うのを望んでいなかった?」


私(村上義清)「河内や紀伊の勢力と連携して三好三人衆にいくさを挑んだが敗れてしまった事が全てを物語っているであろう。負けることがわかっていて三好と袂を分かつような奴では無い。加えて三好三人衆には将軍の資格を有する人物がいる。そしてその人物が次の将軍に就任した。」




 14代将軍足利義栄。




真田幸隆「三好家当主を使って追い出した三人衆が、今度は将軍を使って松永久秀を亡き者にしようと動き出した?」


私(村上義清)「そうなってしまうと、たとえ義輝の仇を討ちたいと考えている者であっても今の将軍を敵に回すことになる。その将軍を任命した朝廷や天皇を敵に回すことにもなるわけであるから動くに動けない状況に追い込まれてしまう。結果、松永親子は孤立し、久秀は今。行方知れずとなっておる。」


真田幸隆「再起不能でありますか?」


私(村上義清)「生きてさえいれば不可能ではあるまい。お前がそうであっただろう。それに息子の久通が本拠地多聞山城に残っている。」


真田幸隆「親子の縁を切って三人衆側についたのでありますか?」


私(村上義清)「いや、そうでは無い。城が堅固であるがため、攻め取ることが難しいのと河内でのいくさが続いているため大和まで手が回っていないのが現状である。ただ三人衆側についた筒井順慶が大和を縦横無尽に駆け巡り、松永の権益の簒奪に動いているがな。」

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