第168話将軍のためと言われても
私(村上義清)「ところでさ。」
真田幸隆「なんでしょうか。」
私(村上義清)「仮の話なんだけど。」
真田幸隆「実態から離れた話に興味はありません。」
私(村上義清)「ごめん。聞いてください。」
真田幸隆「わかりました。」
私(村上義清)「政虎が越中能登そして加賀を制圧する。ないし一向宗との関係を修復することが出来たとする。」
真田幸隆「はい。」
私(村上義清)「同じく関東の北条氏康氏政親子を関東公方ないし関東管領の膝下に収めることが出来たとする。」
真田幸隆「後顧の憂いが無くなりましたね。」
私(村上義清)「これまで通り朝倉義景が越前若狭における人と物の通行を認めてくれたとする。」
真田幸隆「いよいよ政虎の上洛を阻む障壁が無くなりました。」
私(村上義清)「となった場合、関東の諸将は果たして政虎について行くのだろうか。」
真田幸隆「そう言われればそうですね。政虎の目的は『将軍様を救うため。』でありますので、これまで関東公方の秩序で動いていた彼らからすれば、敵(将軍)のために遠征することになり、かついくさをすることになります。」
私(村上義清)「それを指揮するのが政虎。」
真田幸隆「関東公方の敵であり、幕府とずぶずぶの関係にある関東管領でありますね。」
私(村上義清)「言うことを聞くと思うか。」
真田幸隆「京よりも断然に近い小田原の時ですら勝手に帰った連中ですからね。」
私(村上義清)「もしも首尾よく、将軍様を守ることが出来るようになったからと言って、関東の連中に旨味があるかと言われれば。」
真田幸隆「関東の全てが政虎の味方でありますから、関東の中での加増を期待することは出来ません。かと言いまして畿内の土地が欲しいか?と言われましても。」
私(村上義清)「欲しいと思うか?」
真田幸隆「飛び地の運営と安全保障が担保されていれば考えないこともありませんが。」
私(村上義清)「将軍は刀が趣味らしいぞ。」
真田幸隆「将軍様1人が太刀を振るったところで多勢に無勢でありますし、他人の土地を管理するだけの力がありましたら地方の勢力に出兵を依頼することもありませんので。」
私(村上義清)「自分で管理をしなければならなくなる。」
真田幸隆「はい。関東との距離を考えましたら、どちらかは他人に全てを任さなければならなくなりますし、統治機構を少なくとも2つ用意しなければなりません。将軍様をお守りすることが主たる仕事になりますので、畿内に本拠地を置くことになります。そうなりますと関東で謀反が発生し、権益を失うことになります。」
私(村上義清)「どうする?」
真田幸隆「『何もいらないので関東に帰ります。』になりますね。」
私(村上義清)「上洛は成功すると思うか?」
真田幸隆「それでもやろうとしているのですよね。政虎は。」
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