旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。

第114話突進

　春日虎綱による砲撃を喰らった高遠頼継。先手に倒れるものが出るも足を止めず春日虎綱率いる部隊へ突進。もはや後戻りは出来ない。目の前の春日虎綱を血祭りに上げ。勢いそのままに村上義清の背後に襲い掛かる決意を固めた高遠頼継。その頃、塩尻峠……。

私（村上義清）「そう言えば……。」

保科正俊「寝込みを襲うことが出来たとは申せ、ここはいくさの真っ只中であります。よそごとは禁物ですぞ。」

私（村上義清）「そうなんだけど……。虎綱がやろうとしていることは結構……。」

保科正俊「危のうございまする。」

私（村上義清）「だよな。」

保科正俊「真田（幸隆）殿から春日（虎綱）殿に、此度のいくさについての話があったそうでありまして、そのあとでしたか。私のところを訪ねて来たのは……。」

　少し時間を遡って葛尾城近くの保科正俊の屋敷。

保科正俊「敵の攻撃を防ぐ方法について尋ねたいことがある。と……。」

春日虎綱「はい。先の尼ヶ淵のいくさにおいて、我が主君武田晴信は村上義清に敗れてしまいました。」

保科正俊「そなたにとっての主君は変わらず武田殿なんだな。」

春日虎綱「殿（村上義清）にもそのことは言い続けております。」

保科正俊「『お前とはカネだけで繋がった関係なんだからな。』と言ったところか。」

春日虎綱「かえってそのほうが良いのかもしれませんし。」

保科正俊「まぁそうだな……。で、本題に戻ろうか。」

春日虎綱「はい。武田には板垣信方、山本勘助と言ったいくさに長けたものがいました。」

保科正俊「彼らには（高遠を攻められた際）硬軟織り交ぜやられてしまった……。」

春日虎綱「にも関わらず村上義清に敗れてしまいました。」

保科正俊「そうだな。」

春日虎綱「板垣信方は強いおかたです。実際、強かった。しかし、攻めに強過ぎました。故に幸隆様の計略に嵌り……。一方の勘助は陣形に長けていました。ただ陣形に長け過ぎてしまっていました。過信していました。故に想定していなかった未知の兵器に遭遇した時。対処する術を持ち合わせてはおりませんでした。結果、殿（武田晴信）をお守りすることが出来ませんでした。」

保科正俊「それで私に相談とは……。」

春日虎綱「私は強くはありませんし、陣形で以て戦意を喪失させることも出来ません。故に私は隊の移動で以て敵を翻弄することに活路を見出しております。幸いにして今のところ対応することが出来ています。しかしずっと一芸だけで生き残っていくことが出来ないことを板垣や勘助から学びました。」

保科正俊「隊の移動だけでは対処することが出来なくなった場合の事を考えている。と……。」

春日虎綱「はい。」