旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。

第110話内応

　『村上義清信濃守任官』に伴い悪化の一途を辿ることとなった小笠原長時との関係はついに……。

「御館様！小笠原長時。諏訪に向け出陣！！」の報が村上義清のもとに。その少し前……。

私（村上義清）「高遠が見当たらぬが。」

真田幸隆「四郎（武田の子）のことですか。彼なら虎綱と一緒に保科（正俊）のところに行っていますが。」

　保科正俊は高遠家の元家臣で現在は村上義清の直臣。

私（村上義清）「そうでは無くて頼継のほうだよ。」

　高遠頼継は村上義清に降伏後、葛尾に移り隠居生活の身。

真田幸隆「あぁ頼継でしたら、殿の仰せの通り高遠に戻りました。」

私（村上義清）「えっ！いつの間に！？」

真田幸隆「殿が越後に行っている間の出来事でした。報告遅れました。頼継が『小笠原を出し抜くこと。了承した。』との話がありまして。」

私（村上義清）「どのような方法を採ると……。」

真田幸隆「はい。頼継は『私が長時に内通したふりをすることにより、長時を諏訪に誘い入れます。そこで……。』」

私（村上義清）「我らと長時が戦っている横を頼継が狙うのか……。」

真田幸隆「はい。そう申しておりました。」

私（村上義清）「うちの兵は付けたのか。」

真田幸隆「いえ。『自らの兵のみで無ければ長時は疑うことになりますから。』と。」

私（村上義清）「断って来たと。」

真田幸隆「はい。」

私（村上義清）「それをお前は信用したのか。」

真田幸隆「表向きには『はい。』でありますが、本音は……。」

私（村上義清）「では何故認めたのだ。」

真田幸隆「そうでもしなければ、長時からいくさを仕掛けさせることは出来ませぬ故。」

私（村上義清）「頼継が求めた報酬は。」

真田幸隆「『高遠城への復帰』と申しておりました。」

私（村上義清）「それに対してお前は。」

真田幸隆「『殿にお伝え申し上げます。』とだけ伝えました。」

私（村上義清）「それを聞いて頼継は。」

真田幸隆「了承し、高遠へ戻って行きました。」

私（村上義清）「大丈夫なのか。」

真田幸隆「わかりかねます。」

私（村上義清）「長時といくさとなったとしよう、。」

真田幸隆「我らと長時が戦っている横に頼継が陣を張ることになります。」

私（村上義清）「見方によっては頼継の采配１つでどちらに勝たせるかを決めることが出来る……。」

真田幸隆「たぶんでありますが、頼継はどちらに対しても良い顔をしていると思われます。双方に人質を出していることも考えられます。場合によっては不戦と言う選択肢も視野に入れていることかと。」

私（村上義清）「そうなることがわかっていて戻したのか。」

真田幸隆「いえ。頼継を不戦などにはさせませぬ。必ずや、いくさの場に引きずり込んで見せます。ですので……。」