旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。

第60話武田晴信は

私（村上義清）「一方的に攻め込まれたこちらから和睦を打診する理由はないな……。」

真田幸隆「同じことは武田にも言えますね。」

私（村上義清）「かと言って攻め滅ぼすことも……。」

真田幸隆「晴信が生きている内は……。」

私（村上義清）「……だよな。」

　その武田晴信はいない。

私（村上義清）「武田と今川。それに北条は同盟関係。」

真田幸隆「確かに武田と今川。そして武田と北条は同盟関係にあります。ただ今川と北条は必ずしも良好な関係ではありません。」

私（村上義清）「北条が持っている駿河の権益を（今川）義元が奪ったところでの和議だったからな。」

真田幸隆「その両者の間に入っていたのが武田晴信。」

　その武田晴信はもういない。

私（村上義清）「北条氏康が色気を出してきても不思議なことでは無い。」

真田幸隆「はい。次に関東北部と信濃を見ますと……。河越城の戦いの後、北条と武田は山内上杉領に進出。佐久は武田。武蔵は北条。上野においても北条優勢の状況が続いています。その一翼を担っているのが武田晴信。」

　その武田晴信は存在しない。

真田幸隆「この２つの地図を繋げてみましょう。」

私（村上義清）「武田、今川、北条の三者がこの地を席巻してはいるけれども、よくよく見れば全て晴信が関わっている。」

真田幸隆「そしてもう一つ忘れてはならないのが河越城の戦い直前の状況。山内上杉と今川が手を結び北条氏康に挑んだ。確かに今川と北条は和議を結びました。北条が山内上杉を倒しました。武田と北条が共同して山内上杉に圧迫を加えています。ただし山内上杉と今川が敵対しているわけではありません。加えて、そのいくさによって北条は窮地に陥りました。それを救ったのが武田晴信。」

私（村上義清）「だからこそ我が領内の安全を確保するためにも武田晴信を亡き者にする必要がある。」

真田幸隆「はい。」

　その武田晴信が討ち死にを遂げた。

私（村上義清）「それでも武田はいくさを辞めないように思うのであるが。」

真田幸隆「直臣はそうなるでしょう。ただあそこも国人が強い国でありますので。」

　東部に小山田。南部に穴山など武田晴信が完全に掌握することの出来ていない地域が存在するのが甲斐の国。これに対抗する直轄領を獲得するため信虎、晴信親子は信濃へ進出していたのでありましたが、村上義清との戦いによってその計画は頓挫。

私（村上義清）「国人の発言を無視することは出来なくなる。それも跡取りが元服前となれば尚更の事。そうなった時、頼むことになるのが……。」