第41話収容

「やってるな……。」




 戦線が間延びせぬよう武田晴信の命により、本陣と板垣信方が攻め入る尼ヶ淵の間に兵を進めた甘利虎泰。




甘利虎泰「……少々苦戦しているようにも見えるな……。見て参れ。」




 尼ヶ淵に物見を出す甘利虎泰。その報告を受けた甘利虎泰は




武田晴信「何!!板垣が……。」




 急ぎ使いを本陣へ送るのでありました。そして……。




山本勘助「『板垣隊を救うべく尼ヶ淵に兵を進めた。』と申すのか!!」




 甘利虎泰は尼ヶ淵へ向かうのでありました。武田信虎時代より先陣を務め、数々の勲功を挙げて来た板垣信方の突然の死により最前線で孤立した板垣隊と諏訪衆を救うべく、敵の真っ只中へ突入した甘利虎泰。この報に次なる一手を見出すことが出来ない武田本陣。その頃。




「本当に何も残っておらぬのか……。」




 先に板垣信方より周囲の探索の指示を受けていた板垣隊と合流した甘利虎泰は報告を聞き。城門に近づきさえしなければ敵が城から打って出ることが無いことを確認。




「よおし!ここで諏訪衆と合流し、立て直しを図ることにする!!」




と下知すると共に更に本陣へ使いを走らせる甘利虎泰。甘利虎泰の着陣に、板垣信方を失い算を乱していた諏訪衆も落ち着きを取り戻し、城門から打って出て来ることに注意を払いつつ1人また1人と集まって来るのでありました。そこで城の様子を聴いた甘利虎泰は、




「ここは無理攻めをせず。殿の着陣を待って包囲することとする。」


と武田晴信の進出を促す使いを走らせるのでありました。とは言え、西と南が崖であるため、甘利虎泰が今居る東側を抑えてしまえば問題はない。敵が打って出る様子もない。加えて急な出陣であったため手持ちの兵糧も心細い。とりあえずはここに陣を張り、改めて何かないか周囲の建物の様子を伺わせる甘利虎泰。しかし……。




甘利虎泰「……何もないのか……。」


家臣「はい。」


甘利虎泰「本当にただの空き家か。」


家臣「全くない。と言えば嘘になるのでありまするが。」


甘利虎泰「何かあるのか。」


家臣「はい。」


甘利虎泰「申してみよ。」


家臣「干し草がありまして……。」


甘利虎泰「馬飼っていれば必要になるわな。」


家臣「はい。ただその干し草を取り除いた下にこのようなものがありまして……。」


甘利虎泰「なんだ見せてみよ。」




 家臣から受け取る甘利虎泰。




甘利虎泰「ん……!?これは……。どこかで見たことがあるような……。ん!?幸隆め!!謀りやがったな!!!」




 その頃




武田晴信「ん!?わしに出陣を。と……。」




 甘利虎泰の使いが武田晴信の本陣に到着。




山本勘助「甘利様が殿にお願いするとは珍しいこともありまするな。」


武田晴信「そうだな……。板垣のこともある。このまま見捨てるわけにはいかぬ。」


山本勘助「御意。砥石城に隙を見せぬよう我らも出陣しましょう。」




 本陣に多くの旗を立て、まだ本陣に居るように見せ掛けた武田晴信は、全軍を西へと進め始めるのでありました。まさにその時。




武田晴信「なんだ!!この音は!!?」




 突如武田晴信本陣西から轟音が轟き渡ったかと思えば




山本勘助「あそこは!!?」




 尼ヶ淵付近から数多の火柱が噴き上がったのでありました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る