炎の精霊王イフリートとの闘い

火山の頂上付近に俺達は近づいてきた。


「暑いわね、トール。あのジュース飲んでるのに」


 クーラードリンクを飲んでいても限界というものが存在する。限界を超えればやはり暑くなるのだ。炎耐性が身に付くだけで、炎に対する完全耐性とまではいかない。そんな感じである。


「これはもう我慢してくれとしか言えない……それより、そろそろ出てくるみたいだぞ」


「出る?」


 火山の頂点にはマグマが吹き荒れていた。


「勿論、俺達の討伐対象モンスターである」


 突如、マグマが盛大に噴出された。


「「きゃっ!」」


 エミリアとセフィリスが短い悲鳴をあげる。


 そこに現れたのは全身に炎を纏った大男である。あれが炎の精霊王イフリートである。


「我の名は炎の精霊王イフリートである! 汝ら愚かな人間よ! 我に挑みに来たのか!」


「挑みに来たんじゃないわよ! 私達はあなたをぶっ倒しに来たのよ!」


 エミリアは叫ぶ。


「エミリア、ぶっ倒すって、女の子なんだから。上品な言い方じゃないだろ」


「いいじゃない。もう私は王女じゃなくて冒険者なんだし」


 冒険者ではあるが、それ以前に女の子ではあるだろう。まあいい。今はそんな事を気にかけている余裕はない。


「ぶっはっはっは! 威勢の良い小僧と娘っ子だ! 我に挑むどころか倒すだと! 面白い! その心意気やよし!」


 イフリートは高笑いをした。突如、火山のマグマが吹き荒れる。いくつもの火柱を作り出した。


 偶然ではない。完全にイフリートによりコントロールされているのだ。


「命を賭してかかってくるがよい! この炎の精霊王イフリートに!」


「トール! セフィリス!」


 エミリアは聖女としての力を発揮する。


「オールステータスバフ!」

 

 エミリアはパーティー全体に良き通る、バフ(支援)魔法を唱えた。


 俺とセフィリス、そしてエミリア自身の全ステータスが向上した。俺の力も漲り、そして体も軽くなった気がした。


「ありがとう、エミリア」


「ありがとうございます、エミリアさん」


「どういましまして。だって、私達、パーティーじゃないの。当然の事よ」


「何を小細工をやっている! 食らえ! 地獄の火炎を食らうがよい!」


 イフリートの放つ炎が俺達を襲い掛かる。


「ホーリーウォール!」


 エミリアは聖なる結界を発動させた。結界が俺達の盾となり、紅蓮の炎からその身を守る。


「ぬっ、ぬうっ! ちょこざいなっ!」


「アクアアロー!」


 弓聖のジョブを貸与されているセフィリスは弱点とされる水属性の矢で攻撃をされた。


「くっ! 邪魔くさい! この小蠅めっ!」

 

 一発一発のダメージは小さくても、弱点属性故にダメージはそれなりであった。決して無視できないダメージ量な様子だ。


「セフィリス! もっと弦を引っ張れ!」


「はい! トールさん!」


 アルテミスの弓の効果だ。アルテミスの弓を限界まで引っ張って射ればそれだけダメージが増す。その分、速射性は低下するが。いわば弓聖のセフィリスの必殺技というやつだった。


「アクアアロースペシャル!」


 セフィリスは水属性の矢を放つ。今までよりも強烈で鋭い、大ダメージを与えられる一撃だ。

 矢が突き刺さる。


「ぐ、ぐおっ! こ、このっ! 小蠅がっ!」


 イフリートは怯んだ。


「今だ!」


 俺は職業を自己貸与(セルフレンド)する。


「仕上げと行くか! 炎の精霊王イフリート!」


 俺は自らに職業を貸与(レンド)した。



 

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