【ラカムSIDE】渋々国王に失敗の報告に向かう
「はぁ……はぁ……ぜぇ……はぁ」
「はぁ……はぁ……はぁ」
ラカム達のパーティーは命からがらドラゴンから逃げ出していった。
「ど、どうしてこんな事になったんだ」
「そんなの私だってわかんないわよ」
ラカム達は嘆く。もうわけがわからなかった。かつて発揮できていた力や魔法を全く発揮できなくなっていたのだ。
「わかんねぇけど。どうやら俺達調子悪いみたいだな。疲れでも溜まってるのかな」
原因不明の不調にラカム達は困惑した。
「ど、どうするのよ。国王たちに失敗したって報告しにいかなきゃじゃない」
メアリーは嘆く。
「仕方ねぇだろ。失敗したんだから。原因不明の不調があるのに、今更ドラゴン退治なんてできるかよ」
「そうね」
「ぐっ……口惜しいが仕方ない。聖騎士の俺がいながらこんな結果になるとは。何ともふがいない事だ」
「その通りです。大僧侶の僕もついていたのに。何とも情けない事です」
この時もまだ四人は自分達が実は外れ職業に選ばれているとは思ってもみなかった。自分達が当たり職業に就いていると信じて疑っていなかったのである。
◇
「おお!! 勇者パーティーの面々よ! 無事に帰ってきたのであるな!」
国王は笑顔でラカム達のパーティーを出迎えた。
「さぞお疲れであっただろうな。なにせあのドラゴンを退治するのだ。しかし諸君等ならやってくれると思っていたぞ!」
「流石ですわ。勇者ラカム様。そしてパーティーの皆様。皆様なら王国の危機を救ってくれると、私、信じておりましたわ」
国王と王女は羨望の眼差しでラカムのパーティーを見てくる。
気まずい。これは実に気まずい。失敗したなんて打ち明けるのは気が重くなってくる。
しかし嘘を言うわけにはいかなかった。嘘を言って実際は倒していない事がバレたら、余計に立場が悪くなる。実際のところドラゴンは健在なのだ。
ラカムはバツの悪い顔で告げる。
「も、申し訳ありません! 国王陛下! そして王女様! 俺達はドラゴン退治に失敗しました!」
ラカムは頭を下げる。
「な、なんだとーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
「な、なんですってーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
驚いた国王と王女は叫びをあげる。
「そ、それは本当か!? 勇者殿!」
「そ、それは本当でございますか!? 勇者様」
「え、ええ。本当です。俺達はドラゴン退治に失敗しました」
「なんという事だ……勇者パーティーには大変期待していたというのに。これでは我が王国に打つ手はない。北の洞窟のドラゴンには苦しめられ続けるというのか。ううっ」
「そんな、勇者ラカム様のパーティーならきっと我が王国の危機を救ってくださると信じていたのに。こんな事になるなんて。私達、王国アレクサンドリアはどうすればいいんですの!?」
国王は嘆き、悲しみ。王女は瞼に涙すら浮かべたのだ。
「も、申し訳ありません。本当に。なんとお詫びをしていいものか」
「もうよい。失敗は誰にでもある」
「申し訳ありません。俺達は失礼します」
「勇者様……残念ですわ」
王女とのラブロマンスを夢見ていたラカムは厳しい現実を突きつけられ、大層落ち込んだ。
◇
「ううっ……どうすれば、どうすればいいのだ!」
「どうすればいいんでしょうか。お父様、これから私達は」
国王と王女は嘆き悲しんでいた。
――しかし、その時。二人に突然の吉報が訪れる。
「国王様! 王女様!」
使用人の執事が部屋に飛び込んでくる。
「な、なんだ!? どうした!? そんな血相を変えて」
「大変なニュースであります! なんと、北の洞窟のドラゴンを倒した冒険者パーティーが現れたそうです!」
「な、なんだとっ! それは本当かっ!!」
「はい!! その通りですっ!」
「フィオナ……」
「よかったですわ! お父様!! この王国は救われたのですね」
王女フィオナと国王は泣いて喜ぶ。
「ああ。これでもうドラゴンに苦しめられずに済む。だ、誰だ!! そのドラゴンを倒した英雄は!! すぐに王国まで連れてまいれ!」
「は、はい! ただいま!」
こうして王国はドラゴン退治を果たした英雄を呼びだす事となるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます