第百三十四話 雑草の芽を摘む


今はユータとドーラは日本の実家にいる。

両親には

「ほら、あのダンマス王国の王様が、超能力みたいなのでいつでも送り迎えしてくれるので、行き来が駅に行くより楽なの」

と説明している。

ムータンとダンマス王国は連合して侵略軍と戦ったので、その繋がりは理解されている。


実際、ニュースにもなっているダンマス王国軍の不思議さは「異常な超能力の威力」ではないか?という説が有力なようだ。 ぷw、な話だけど、まぁ魔法も超能力というカテに入れてしまえば、そういうこととも言えるかもな?というのがドーラの意見。


「ダンマス王国の王様?いつもムータンにいるよ?さっきも一緒に朝ゴハン食べてきた。」ユータ


この子達は一体なにやっているのだろう?

と不思議に思うけど、まぁドーラがいるのだから大丈夫なんじゃないかな?

とかとも思っている両親。

なんとなく信頼感強いからねぇ、、ドーラ。


市は、土日の午後は道場に戻って稽古を付けている。

平日は、自主稽古をしたい者だけ道場を使って良い、となっている。

なので、ドーラも日本にいるときは、夕方に顔を出すこともある。


街に出てみても、平穏に見える。日本はあの侵略戦争に参加強制されたが、戦争大好き派全員がなんかいきなり消えたので、頑なに拒否して侵略に加担しなかった。

なので、アレな国の軍事施設があるところだけ消えたけど、それ以外には全く被害を受けなかった。


まぁ、経済界や政界や、それに関係している者たちの重鎮が何十人かとその家族や一族が全員消えたという話だが、それによって日本は緩やかに方向転換できている様にも見えるそうだ。ダンマスが言うには。

「まだどうなるかわかりませんけどね、権力握った者たちは豹変する場合も少なくないですから」と、ダンマス。


油田を持つ国は、ダンマスのあの発言により、石油やガスを売り急ぎ始め、価格はかなり下がった。

先進国の多くが先の戦争で激しくダメージを受けたので、日本の輸出は有利になっているのだが、今の日本政府は食料自給を元に戻すこと、国内需要を元に戻すこと、に力を入れている。

「もともと日本も国内経済依存国です。輸出なんかおまけだけだったんですよ?知らされていないだけで、勘違いするように誘導されていたみたいですけどね、ぷww」ダンマス


なので、安心みたいだ。

ボクらは心配することなく、向こうとムータンのことに集中していいんだろう。


もう、今回は特に買うものもないので、いつもどおりに食事に行ったり漫画を見に行ったり、夕方には道場に寄って、誰かが居たらドーラが稽古を付けてあげ、夜には家に帰る。

こっちの世界での半月ごとくらいに、ひもの1000枚とか2000枚とか、そこらへん適当でいいみたいで、、持ってくればいいみたい。

ドラゴニアでほんとに大量に必要なのは、ムータン王宮経由して手に入れてもらえばいいだけなんだけど。


今はまだ、写真関係の材料が少なくなってきたら仕入れるだけだけど。

ドラゴニアで「写真班」が出来、数人が日々現像や焼付に努力している。

でも、本格的に写真館を展開しはじめたら、必要量は膨大な量になるだろう。


写真の価格はボッタクリなどしないけど、兌換貨幣になれば、向こうの値段がそのままこちらの価格に成る。

向こうでダンマスは金の価格はかなり高めに設定している。こっちの物価換算での金貨の価値と似たようなところになるように。


なので、それなりの材料費になってしまうだろう。魔力が多く、念写ができる者が居れば、その者に頼んだほうがよいかもしれない。ただ、紙の質、それは印画紙にまさるものはないだろう。


そうやって、ユータとドーラは、ダンマスの話を思い出したりしながらいろいろ話した。

その結果、

「ダンマスは、ムータンを通して、ドラゴニアとこっちの世界での貿易とかし始めるんじゃね?」

と。

人間やらでなければ、ストレージに入るものがほとんどなので、持っていったり持ってきたりできる。

今のダンマスの魔力量は不明なくらい多い。そのストレージはどのくらい入るのかさえ想像付かない。


「もしかしたら、人間とか、入れられるんじゃね?」ドーラ

そうかもしんない、、、とユータも思った。


ーー


当然、ダンマスもそういうことを思いついていた。

だが、そうそう人体実験できない。

なので、

どーなってもいいやつ、がいないななー、、、と日夜世界を飛び回って探していた。

もう完全ゲスはすべて消し去っているので、そうそう見つからないだろう。

と思っていたが、、


一族郎党消したある欧州の王家の血筋だと言い出して権力を得ようとしている者が居た。

表立って動かず、裏で動けば見つからないとか思ったのだろう、


そいつをライブでやっている欧州の大手テレビの生放映中のスタジをに転移させ、

おまえの血筋の王家は、先の侵略戦争の大犯罪者なので一族郎党消し去ったのだが、お前を消し忘れていたようだ。

と言うダンマス。

そいつはいろいろ反論したが、「言いたいことはそれだけか?」と消した。(実際はストレージに入れてみた)


そしてカメラに向かって、

「さっきの奴がほんとに血筋の者かどうかは問題ではない。凶悪犯罪に組みした奴等の仲間だと言った時点で有罪だ。表立ってやらなければバレない、なとど幼稚な事を考え悪事を行う。今後、お前たちがそういうのを見過ごすようであれば、お前たちも同罪になる。

わかるか?今は、私達がお前たちに猶予を与えてあげているだけだ。私達が「駄目だ」と思った時点で、お前らは消えている。」

と言い放ち、転移して消えた。


TVカメラに向かって言ったこと、その内容は、ダンマスにとってはホントはどーでもいいことなのだ。

ダンマスやドーラやユータが、こっちの世界に責任持つ理由など無いのだから。

ただ、こーゆー碌でもないことしてバレないと舐めたことをするなよ?と警告しただけ。

実験のついでに。


で、実験は?

ダンマスはそのまま洞窟に行って、少し眠ってしまうので、それは仕方がないとして、起きてから向こうに戻った。

で、ストレージから出してみた。

瀕死。

でも、今までは生き物を入れたら死んでいたので、やはり可能性はある。

何か付与してストレージに入れるとかすればいいのではないか?とダンマスは感じた。


回復してからもいちどストレージにしまい、日本のある世界に戻る。


で、洞窟からムータンに転移し、そこで出してみた。

先程よりもかなりマシな状態だった。

回復後、現状保存を意識してバリアでそいつをピッタリ覆い、またドラゴニア側に行ってみる。


仮死状態であったが、回復させると元の健康な状態であった。脳も元のようにクズにままなようで、なんか言い出し始めたので声を出ないようにし、動けないようにした。

で、また同じようにバリアで覆い、戻った。


ムータンに転移し、仮死だけど良好な状態、で回復で蘇生も楽だったので、あとはまっさらなナニも魔法を掛けたことがない者をまた数人実験してみればいいか、と考えたダンマス。なのでこのモルはもういらないので、トバした、モモンガ達と同じようにシェイクしてゴミ棄て場に。


ーー


モモンガ達は頑張った。10日ほどで、ゲスザンスとゴーミの大半の孤児院を回りきり、更にほぼすべての街や村を回って、浮浪児達も回収していた。

ドラゴニアに飛ばされた子どもたちは、最初は文句言う者も居たが、数日の後「帰りたいものが居れば元の街に送るけど、どうする?」と訊かれると、帰るというものは皆無だった。


最初多人数が送られてきたが、徐々に少なくなり、最後は浮浪児3人だけだった。ほぼ回り尽くしたのだろう。

また、大人も2人送られてきた。

ガンダと院長の目に充分かなう者たちだった。


これで、少なくとも、ユータとドーラの行動範囲内において、子供だから、というだけで理不尽な目にあっている「保護者が居ない子」はいなくなったはずだ。

これ以上は探しようがない。


あとは、

「もし、親がろくでもなく、子供を虐待するようであれば、逃げてもいいんだ。逃げ先はドラゴニアだ。」

ということを周知させれば、もしそういう子が居たら、行動するか考えるだろうし、周囲の大人たちも逃げるために手を貸すようになるだろう。少なくとも今までの様に見ぬふりはしなくなると思う。


そう、院長とガンダは考え、各国にそのような通知を行った。

自国内にそのような通知を行うことを恥だと思うような者もまだいるかもしれないが、適当な街や村に抜き打ちチェックにいくからね?と添えておいた。

そこまでやってもわからないようであれば、あとはドーラとユータに委ねるしかなかろう、と院長とガンダ。


ゲスザンスとゴーミにおいては、ギルド支店を出し、実質そこの地域をチェックさせる。上記のことも立て札を立てさせ、抜いたりするような者が居たら始末する。

ゲスザンスとゴーミは、しつけが全くされていない野良犬の群れのようなものだから。

そのギルド各支店の監督を、ジョニーに頼んだ。


向こうの世界も、こっちの世界も、まったくわかっちゃいないクズどもがまだまだ多い。

なので、それに合わせた行動をしなければ、今までやったことの意味が半減する、下手すれば意味はなくなってしまうこともあるだろう。


全く考えの逆な相手であろうと、お互い本気で相手の考えていることを理解しようとすれば、話で妥協点は見いだせる。

だが、自分の言い分を押し付けるだけ、衝動を押し付けるだけしかできない奴は、社会性ゼロだ。そいつが他に誰もいない山の中海の中で生きていくならいいが、そういう奴は寄生して生きることしかできない。害悪なだけだ。もし、上っ面がとても良い人でも、だ。


今回の件も、国の上から一般大衆まで、上面のいい人ぶりなのか、ほんとにいい人なのか、がよくわかる事例になるだろう。

ほんとにいい人が生きやすい地域になっていけば、生き残れる。

そうならない地域は悪意を生み出す。いずれ、ドラゴニアまでも悪意の影響を与えるかもしれない。その芽は摘まれるだろう、街ごと。

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