第四十七話 良い国に引っ越します。


その晩ドラゴニアに戻った。

ぐっすり寝て、翌日からドーラはほかの子達を少しづつ集め、魔力を練ることから始めさせた。

本来ドラゴンはそんなこと知らないが、ジオから人間が魔法を使えるようになるためにはどうしているのか?を聞いたのだ。


ジオもテイナも魔力を増やすためにガンガン使ってぶっ倒れているので、彼らは教える時間がない。

ガンダはほかにやること多すぎだし、ザクも本館新領地の畑や養殖や開拓を見回っている。


リーダー級が少な過ぎる。

かといってイキナリ年長組にやらせるのも無理だし、今育てている最中なのだ。


養殖組の子がかなりよくなってきていて、そろそろ仕事場を任せられるだろう、夜のミーティングでザクは言っていた。

マキも、別館の食堂の子達もかなり自分達で考えて行動できるようになってきたと。試しに任せて、マキは2日くらいダンジョンに潜ることもあるそうだ。

ただ、「武力がない。」ので、ならず者や領主、教会の奴らがもし来た時には対応が難しい、と。


「やっぱ、皆がドア使って逃げられる時間稼ぎを優にできるくらいの者がほしいね。」マキ

「そうだなぁ、、孤児院、別館、本館に、最低一人、でもできれば2−3人ほしいよな」ガンダさん


「他の孤児院に、聞いてみましょうか?」院長

孤児院の院長は、ドアができてから、毎回ではないけどできるだけ夜のミーティングに参加するようにしているようだ。


「信頼できる人、いるんですか?」テイナ

「・・全面的に信頼とは言えません。が、こちらで引き取ることもできる、といえば、、、」

「多分、聞かない子、を送ってくるだろうな。でも大丈夫だ、俺もそういう子だったし、マキもそーだったよな。」ガンダ。


「まぁ、、そういう子のほうが、楽だっちゃーらくだよね。目的持てば一人ででも頑張ることができる。一人立ちが早いんだよ」マキ


「んじゃ、決まりだな。試しに一度たのんでみてください。10人位。幼児は、、まだ難しいんで断ってください。読み書きは教えるので、そう言って結構です」

「あと、基本、食い放題だってね!」マキ


「獣人の子、いるにょか?」

「うちにはいなかったですが、いるとこもあるみたいです。」

「獣人は子供を大切にするからな、よほどじゃないと孤児は出ないからな」


「魔獣は、自分の子はとても大事にするな!ほかの子は、、自分の子の敵になりそうなのは、、襲っちゃう場合もあるとかだけど」ドーラ

「貴族かよ・・」

「王族じゃね?」

「教会も、、巫女の気が強く出ている子など、出自が悪い(身分が低い)といつの間にか居なくなってますね」院長

おそろしーな教会も、、


その会合の時に、ドーラはマキにお願いしていた。ダンジョン8階層の主が今は誰か居るのか確認できたかどうか?を調べてもらうことを。



翌日。

ドーラは子どもたちに魔法の訓練。

ユータはそろそろヒモノを向こうに持っていく分を作り始めなきゃ、と思って養殖チームに顔を出しに行った。


「ユータ!そろそろ来ると思ってたんだ!できてるぜ?200枚!」リーダーの子。

一番最初のときに、自分達にやらせてくれと言って来た子だ。


「・・・すごいね!!ボク、そろそろ言っておかなきゃなーと、思って来たんだ、、もう出来ていたなんて!!」

「任せろよ!なっつ!」と後ろを振り返り仲間に

「「「おう!!任せろ!!」」」


「・・ありがとう!!ガンバッて売ってくるよ!!!」ユータ


子どもたちは成長しているんだ、自分たちで!!


なので、ドーラの見てたののマネであるが、ユータもそこで養殖班のその場に居る子達にだけでもと、魔力の練り方を教えた。

リーダーの子とあと2人はすぐできた。他の子達は「毎日、朝晩ちゃんと頑張れは出来ると思う。できてる子達が見てあげてね!」

リーダーが「ちゃんと見るから、皆でできるようになるから!」と請け負った。


「皆できるようになると、船動かす時楽だよー」ユータ

子どもたちは皆目を輝かした!船!俺達の船!!


そのうち、でっかい池や湖なんかもほしいよなー、、とか思ったユータ。


いや、できるけどね、でっかいドーラがいれば。

あと、ダンジョンから話の判る水棲の魔物とかリクルートしてくれば、安全万全だし、、


ーーーー


この新領地、ドラゴニア王国(仮称)でには子どもたちはもう50人を超えている。

一番小さな子は5歳。でももう働いている。そして、勉強も始めている。


小さい子達は、半日仕事の手伝いをして、半日勉強する。

勉強は、文字の読み書き、計算、そろばん。そして、知識。

知識は、水は高いところから低い所に流れる、とか、水を火にかけると沸騰して熱くなり、それを触るとやけどするとか、雨雲と雨が降らない雲の見分け方、季節、畑のこと、魚のこと、森のこと、魔獣のこと、などなど。

それらを少しでも知ってから現場に入るのとでは、結構違う。


皆、子供、小さい子を「おまけ」として見ているのではなく、「半人前のプロ」としてみているのだ。

それをその子どもたちは感じる。なので頑張る。そして、少し経てば自分の成長を感じられ、余計やる気ができてくる。早くみんなみたいになりたい!と。

間違いなども叱る者は居ない。間違いはどうしてそうなったのか?を上の子と話していけば、どうすればうまくもっていけるかが、自ずと見えてくる。そして彼らは一つ成長する。


伸びが早い子、遅い子、それぞれだ。遅くても誰も気にしない。「ひとそれぞれだから」をわかっているから。大半が、自分も**よりは遅かった、と経験あるし。


また、時間がある時は、魔力を練ったり、剣技の真似事をする子達も増えてきた。

少しでも自分ができることを増やしたい、と無意識に思っているのかも知れない。

子どもたちから見れば、満月や銀月の皆は、「何でもできるすげー大人」と見える。

その中でもドーラとユータは別格だ。


最近、ドーラが人間の姿になることも多く、子どもたちはびっくりしている。




日本の学校のほうでも友人が増え、バイトも時折あり、楽しく過ごせている。イチさんとタカの様子も問題なく、徐々に魔力が、ほんの少しづつだけど、付いてきているとドーラは言っている。

ヒモノも、月200枚売れるようになり、砂糖や油が結構買え、お金も余裕あるので、皆にお菓子なども買うこともでき始めた。ケーキは、ニヤ達食堂班が上達し、今は新領地のケーキで満足できるようになっている。

牧畜がまだだなのが気がかりだ。牛乳は、クリームやバターになるのだからお菓子には欠かせない。


新領地の畑地は大半が耕かされ、種が撒かれはじめた。勿論、ユータが日本から持ってきた種もある。

田んぼは最初の何回かは「土を作るため」だけになるそうなので、収穫は期待できないとのこと。

でも、年に2度は撒けるので、2年位でよくなるだろう、とザクさん。


ドーラのブレス以内には外の魔獣は入ってこないので、問題は起きていない。


ーー


一月、二月、半年、1年が経ち、その間に新しく来た子達も増え、魔力が多くなり、魔法が使える子が増えていた。

勿論、剣技もそれなりの年長者の子達も増えている。


子どもたちは、班ごとになり、各家に住んでいる。それだけ多くなったのだ。

そして、家々は、もう噴水のロータリーまで立ち並んでいる。



ドーラはダンジョンマスターに会いに行った。

マスターは、ドーラが無事だったことをとても喜んでくれたらしい。

ダンジョンを抜けたことは気にしないでいい、そのまま仲間たちと暮らしなさいと言ってくれたと喜んで帰ってきた。

ただ、、

「今度遊びに行くから」とか不穏なこと言っていたんだよなぁ、、とドーラ。

毒の霧、毒の雲については、「わかった、そのうち人間にも使えるように考えて、それを手土産に行くから」とも。


どこが不穏なのかイマイチわからなかったユータ。


水路の船は子どもたちが作るようになってから何十にも増えていて、皆自分達の魔力で押して動かしている。

川に出て漁をしている養殖組も。養殖組川漁班と呼ばれているらしい。たまにでっかい雷魚みたいのとか、鮭みたいのとか、いろいろ取ってくる。おいしいのは養殖できるか試しているそうだ。


畑は、山側にも広がっている。

「山の斜面は日当たりがよく、結構適している作物が多い」らしい。

果物の木も育て始めている。


魚の余った部分とか、野菜の余った部分などや落ち葉や刈ってきた草などを利用して、堆肥とか、少し作り始めている。

内側の森(ブレスより内側)も、街側は下草を刈ってキレイに手入れさてている。なので獣があまり街に入り込むことはなくなった。


日本ではユータは2年になっていた。勿論落第していない。

あれから、ユータの学校にちょっかいかけてくる他校生徒はいなくなった。

イチさんの道場が付いている、という噂が広まったのが大きいだろう。ユータやドーラが強い、というだけなら、腕試しに来る者も出てきているはずだからだ。


タカは大会に出るくらいまでになった。勝てないけど、大会に出る、ということが面白くなったようだ。

皆、どんどん良い方に行っている。


ーーーー


「この宿の責任者はおるかな?」


別館の帳場に普段見ることがない身なりの者が入って来た。

後ろにはモロ騎士!という身なりの者が数人。


マキは帳場に出ていく前に「全員避難。本館と孤児院にも連絡して。向うに行ったらユータかドーラに言って、ドアを閉じてもらって」と、指示を出した。


幸い、マキ以外にもニヤも来ていた。ニヤは隠れて見ている。なんかあったらどでかい魔法で瞬殺してやる!と構えている。


「私が責任者です」マキ

「・・・では問い直す、オーナーを出してくれ。小娘では話しにならないだろう?」


「・・・少し待ってください、他から呼ばなければなりません」

「ふむ、、何処に居る、、」

「一人はダンジョンにこもっています。もう一人は畑に出ています。」

「ほう、二人居るのか、、しかも一人は一人でダンジョンに?」

「ええ、一人で10階層まで行き来しています」

「・・・・・・」騎士に振り返る、騎士は首を振る。敵わないと思ったのだろう。


「仕方がない、では後日、領主様の邸に、その2人に来るように伝えておけ。」

とその男は騎士達と去っていった。



「はぁ、、、潮時かなぁ、、」

「にゃ!もうここは閉めるのがいいにゃ、仕方ないにゃ。」


その晩、全員で新領地に戻った。

本館、別館、孤児院は戸締まりして、誰もいなくなった。

その晩のミーティングで、3つを閉じることが決まった。


ユータとドーラは、その3つから転移扉を回収し、建物も全て回収した。

「すげーな?結局全部!一回ではいっちゃったな?」ドーラが呆れている。

「うん、ボクもびっくりだよ!」

本館には隣に食堂や雑貨屋の建物もあったのだ。


跡地には、


「お客様たちへ。私達は国を出ることになりました。良い王様の国、良い教会のある国に引っ越します。今までありがとうございました」

と立て看板を立てた。

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