第28話:簒奪・ブリトニー視点

「父王陛下、貴男のような愚か者にこれ以上国をまかせるわけにはいきません。

 今からのこの国は私が治めます」


 言葉は丁寧ですが、顔も表情も父親を殺して王位を奪う喜びに満ちています。

 私に踊らされているとも気付かない愚かなオーガスト。


「愚かなのはお前だ、オーガスト。

 例え余を殺したとしてもベイジルがいる、王妃もいる。

 国内の貴族達がお前のような馬鹿に従うはずもない。

 殺されて首を刎ねられるのがオチだ。

 今ならまだ幽閉ですませてやる、大人しく剣をすてろ」


「クックックックッ、ファッハハハハ。

 ベイジルと母上は先にあの世で父王陛下をお待ちですよ」


 ふっふっふっふっ、私に手抜かりはないわ。

 こちらが味方に引き入れた二人の側近は全て粛清されたけど、我が家の精鋭を送り込んでいるから逃す事はないわ。


「おのれ、自分の弟と母親を殺すとは、それでもお前は人間か。

 いや、お前は昔から愚かで粗暴ではあったが、その分馬鹿で策略は行わなかった。

 ブリトニー、お前か、全部お前がやらしたのだな」


 ふん、今さら何を言っているのやら。

 そんなに愚かでよく今まで国王がつとまつたものね。

 こんな愚者に答えてやる必要などないわ。


「なに、それは私が、いや、余が女に操られる馬鹿だと言っているのか。

 妻やベイジル、佞臣に操られてきた軍王が余の悪口を言うなど許さん。

 まして我が愛するブリトニーまで悪く言うなど絶対に許さん。

 死ね、愚王」


「うぐぎゃああああああ」


 ふっふっふっふっ、何と醜悪な家族だこと。

 兄が配下に弟と母を殺すように命じ、実の父親は自らの手で殺す。

 でもそれこそがこの世の真実。

 弱肉強食、愚かで弱い者は賢く強い者に喰われるのが正しい世の中よ。


「うっうううう、余を殺したとしても無駄だ。

 お前たちはキャメロン嬢に殺されるのだ」


 愚王が、辺境に追いやられたキャメロンの糞女に何ができるというの。


「あら、まあ、こんな老人を一撃で殺せないなんて、どこか悪いの?」


「うぬぬぬぬ、恥をかかせやがって、とっとと死にやがれ、愚王」


 クックックックッ、滅多殺しね。

 四肢が九つくらいに斬り飛ばされ、頭は粉砕されています。

 内臓がぶちまけられ胸が潰され、まるで板のようになっている。

 これがこの国に君臨した王とは誰も思わないでしょうね。


「オーガスト、ベイジル王子とセシリア王妃がちゃんと殺されているか、その眼で確認した方がいいわ」


「そうか?

 だがメイトランド公爵家の精鋭がやっているのなら大丈夫だろう」


「だからよ、オーガスト。

 手柄を立てた家臣はその場で褒美を与えないといけないわよ」


「おお、そうか、そうだな、ではブリトニーに褒美を与えないといけないな」


「まあ、うれしいわオーガスト。

 でも私は何もいらないわ、私の一番の願いは貴男の妻になる事よ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る