第3話:出国・キャメロン視点
最初はほんの少しだけ警戒していました。
欲に駆られた大バカが、オーガスト第一王子に取り入ろうとして、本当に私に斬りかかってくるかもしれないと思ったからです。
ですがさすがにそんな大バカはいませんでした。
この状況でオーガスト第一王子に味方すれば、社交界からつまはじきになります。
まあ、それに、少しでも想像力があれば、オーガスト第一王子が王位継承権争いから脱落するくらいは分かりますからね。
「では皆様、もう二度と会う事はないでしょうが、ごきげんよう」
最後の捨て台詞を残して堂々とこの国から出て行くことにしました。
さぞや印象に残った事でしょう。
何といっても顔から血が噴き出す公爵令嬢の最後の花道です。
舞踏会用の純白ドレスが噴き出した血で片半身だけ真紅に染まっているのです。
噂話として広めるには最高の場面です。
死ぬまで語り継いでくれる事でしょう。
ここまでやったら後は急いで逃げださないといけません。
姿を消したブリトニーが何をやるか分かったモノではありません。
父母を誑かして私を拘束しようとするだけならまだマシです。
密かに始末するように誘導する可能性の方が大きいのです。
父母どころか国王まで操り、王国軍を使う可能性すらあります。
あのブリトニーならそこまでやりかねません。
「キャメロンお嬢様、何事ですか!?」
戦闘侍女のブレンダが心配して声をかけてくれます。
「心配ないわ、計算通りオーガストのバカが踊ってくれただけよ」
「それにしてもその傷は酷過ぎます。
直ぐに手当てしましょう」
「大丈夫よ、もう治癒魔術で癒したから。
それよりも追手が放たれる危険があるわ。
急いでこの国を出ないといけない。
でもまずは王城と王都の城門を出る事が最優先よ」
「「「「「はい」」」」」
ブレンダ達に言った事は嘘ではない。
でも無残な顔の傷は血だけ止めているだけで、後々の為に傷跡は消さない。
オーガストやブリトニーの悪行を糾弾する時の証拠になるからね。
まあ、女心としては複雑なのはどうしようもないですね。
「キャメロンお嬢様、通行許可証などはないんですよね。
賄賂に使う資金に問題はないですか」
戦闘侍女達の頭脳担当、カチュアが即座に問題点を指摘してくれます。
「大丈夫よ、小銭にも含めて金貨二万枚分用意してあるわ。
まあ、大半はダイヤモンドやパールだから、必要な額によったら換金の必要はありますが、その点は大丈夫かしら」
「二万枚分も必要ありませんよ。
一人頭金貨百枚もあれば堂々と国境を出ることができます」
「では急いで城門を突破してください」
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