12 セラ、意に添わぬ相手に体を許す6《聖女たちSIDE》

 ぱさり……ぱさり……。


 かすかな衣擦れの音が響く。

 セラが一枚、また一枚と身に着けた衣服を脱いでいるのだった。


 今だけ我慢するのだ。

 ロメロのもとにたどり着くために。


(だけど、私……どうして、ここまでするんだろう)


 ふと疑問が起きる。


 ロメロの居場所を知るためだけに、いけ好かない男に体を捧げる――。

 以前の自分には信じられない行動だ。


(それだけ――ロメロに会いたいと思っている? この私が? ああ、よく分からなくなってきた……)


 とうとう、最後の一枚まで脱ぎ、セラは瑞々しい裸身をさらした。


 異性の前に裸をさらすのは、これで二度目。

 前回は酔った勢いでの初体験だったので、きちんと理性がある状態で肌を見せるのは初めてである。


「うう、やっぱり恥ずかしい……」


 体が、震える。


 魔王軍との戦闘でも、ここまでは緊張しないかもしれない。

 いや、そもそも緊張の種類が違いすぎて、冷静さを保てそうにない。


「ぐへへへ、なかなかエロい体してるじゃねぇか。さあ、楽しませてもらうぜ」


 ロメロがセラをベッドに引き寄せた。


 押し倒され、でっぷりした中年男の体がのしかかってくる――。




 嫌悪と屈辱の一夜が明けた。


 セラにとっては生涯二度目の性体験である。

 腰の奥にジンと痺れるような感触がまだ残っていた。


「最高の女だ、お前は――」


 バラッドはうっとりした顔だった。


「約束通り、そのロメロって男の場所は教えてやる」

「……どうも」


 セラはため息交じりに言った。


 頬が熱い。

 正直言うと、快感を覚えたことも事実だった。


 見かけとは裏腹に、バラッドのベッドでの作法は繊細で巧みだった。


(……でも『気持ちよかった』なんて死んでも言いたくないわ。こんな男に)


 唇をかむセラ。


「ところで……ロメロって奴はお前とどういう関係なんだ?」

「えっ」


 思わず彼を見つめた。


「ど、どういうって……」


 声が上ずってしまう。


「元仲間よ……それだけ。本当にそれだけだからねっ」


 自分でも動揺しているのが分かった。


 あんな男の話題で、なぜここまで動揺しなければならないのか。

 自分で自分に腹が立つ。


「特別な相手じゃないってことか。へへへ、じゃあ俺にもチャンスがあるよな?」


 バラッドは熱っぽい視線をセラに注いでいる。


「俺は惚れた女にはしつこいからな。覚悟しろよ」



※ ※ ※


ちょっと長くなってしまいましたが、セラたちのパートは次回で終わりです。その次から、また主人公視点に戻ります。

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