10 セラ、意に添わぬ相手に体を許す4《聖女たちSIDE》

 目の前で、仲間がいやらしい中年男にキスを強要されている――。


「ち、ちょっと、シーリスに何するのよ!」


 セラは思わず怒声を上げた。


 バラッドは無視してシーリスとキスを続けている。

 シーリスの方も嫌がるそぶりも見せず、それどころか自分から積極的に舌を絡めていた。


 くちゅ、くちゅ、と唾液を交換する濃厚なディープキス――。


「ふう、なかなか積極的じゃねーか。気に入ったぜ」

「では、占ってくれる?」

「おう。お前が一晩、俺に付き合うならな」

「もちろん」

「よし、商談成立だ」

「待ってよ! シーリスにそれ以上いやらしい真似をしないで!」


 セラは反射的に引き留めようとする。


「そんなに仲間が大事か……それじゃあ」

「えっ……? きゃあっ!?」


 いきなりバラッドに引き寄せられる。


 不意打ちだったのと、シーリスのキスにショックを受けていたこともあって、セラはとっさに対応できなかった。

 バラッドに抱き寄せられ、そのまま唇を奪われてしまう。


「ん、う……」


 強引で息が詰まるような熱烈なキス――。


 ぬめぬめとした舌が強引にセラの口の中にねじこまれる。

 そのまま彼女の舌に絡みついてきた。


「んぐぐぐ……ぅぅぅ……っ」


 セラは目を白黒させた。

 気持ち悪くてたまらなかった。


「くっ……! やめてよっ!」


 セラは強引に彼を突き飛ばした。


「ひどい……! 無理やりキスするなんて!」


 手の甲でゴシゴシと唇をぬぐいながら、セラは悔しげに彼をにらんだ。

 バラッドは悪びれた様子もなく、


「ははははは! いい顔だなぁ! そういう女を屈服させるのが大好きなんだよ、俺は!」


 セラの全身をふたたびじっくりと見つめる。

 特に胸や腰のあたりを何度も何度も、品定めするように――。


「よし、決めたぞ。シーリスとセラ、お前たち二人で俺の相手をしろ。そうすりゃ占ってやる」

「は? いくらなんでも、そんな条件を飲めるわけないでしょう!」

「だったら、他を当たれ。俺以上の占術師を見つけられるならな」

「っ……!」


 意外なほど冷たく突き放すバラッドに、セラは絶句した。


(他を当たれって――もし、こいつ以外の占術師がロメロの居場所を突き止められなかったら)


 胸が、痛くなる。

 それは、ロメロに会える機会が遠ざかることを意味していた。


 ただそれだけのことで、なぜこんなにも胸が痛むのかは分からない。


 だが――やはり、会いたい。

 だが――やはり、こんな男に体を許すなど考えられない。


「――私たちは天下の聖女パーティよ。あなたなんかに軽々しく肌を許したりしない」

「聖女パーティじゃなくて勇者パーティ……」

「マリンさんは話がややこしくなるから黙っていてくださいね」

「もごもご……」


 背後でマリンとエルザがやり取りをしていたが、ここはスルーする。


「どうしても、と言うなら、まずあなたがロメロの居場所を確実に突き止められることを証明しなさい。そうすれば、さっきの条件――考えてあげなくもないわ」

「お高く止まってるねぇ。さすがは天下の聖女様だ」


 バラッドが笑う。


「けど、その高慢さ……気に入ったぜ! 先に占ってやる。そのロメロって男の居場所を突き止められた場合、お前は一晩俺のものになるんだな?」

「検討はするわ」

「おいおい、俺だって一流の占術師なんだぜ? 占ったあげく、やっぱり嫌だ、は通用しねーよ」

「……わ、分かったわよ。あなたがロメロの居場所を突き留めたら……一夜を共にするわ」


 半ば勢いで、セラは承諾してしまった。

 言った後で、心臓が急に鼓動を速め始める。


(ど、どうしよう。もしバラッドの占術が成功したら……私、この人に肌を許すことに……)


 生涯二人目の男性経験――。


 婚約者に顔向けできないネタが、また一つ増えてしまうかもしれない。

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