9 セラ、意に添わぬ相手に体を許す3《聖女たちSIDE》

 バラッドは四十代くらいのでっぷりと太った男だった。

 にやけた顔つきは、いかにも助平そうだ。


「なるほど、そのロメロって奴の居場所が知りたいんだな? ふーん……?」


 バラッドがセラの体を舐めるように見つめた。

 特に胸元や腰に視線が這い回るのを感じる。


 不快でたまらなかった。


「じろじろ見ないでもらえますか? 初対面の女性に対して無礼でしょう」


 セラが彼をにらむ。


「おっと、こいつは失礼。あまりにも美人なもんで……ぐへへ」


 謝罪しつつも、悪びれないバラッド。


 セラはますます不快になった。

 こんな男とこれ以上、一秒たりとも関わりたくなかった。


「お金は払うわ。ロメロの居場所を今すぐ教えて。あなたなら分かるんでしょう?」

「まあ、な。俺の占星術を使えば、突き止められると思うぜ?」


 バラッドが笑う。


「じゃあ、早く占って。言い値で払うわ」

「ふーん……」

「何よ。お金ならあるわよ」

「そりゃ、金は持ってるだろうさ。天下の聖女パーティだからな」

「聖女パーティじゃなくて勇者パーティよ」


 背後でマリンが言った。


「今、それはどうでもいいでしょう」

「よくないよ。あたし、勇者なの聖女のおまけみたいじゃない」

「呼び名の議論は今じゃなくてもいいでしょ。もうっ」


 マリンを軽くにらみ、セラはふたたびバラッドに向き直る。


「で、どうなの? いくら欲しいの?」


 と、詰め寄った。


「教えるかどうかは、俺の気持ち次第だなぁ」

「気持ち? だから、いくら欲しいのよ? 早く言いなさい」

「いやいやいやいや、金よりもっと別のものさ」


 ふたたび全身を舐め回すような眼光を感じた。


(こいつ――)


 嫌な予感がする。


「一晩、俺の相手をしてくれよ、聖女様。そうすりゃ、金はいらねぇ。無料で占ってやるぜ」

「は?」


 セラは目を丸くした。


 今、この男は何を言ったのだろう?

 聖女である自分に対し、よりによって――。


「一夜を共にしろということ!? ふ、ふざけないでっ!」

「ふざけてねーよ。占ってほしけりゃ、俺に抱かれろよ、聖女様」

「対価に体を要求するなんて最低よ!」

「はは、お前らは俺の占いがなきゃ困るんだろ? 今までにもそうやって何人もの美女を抱いてきたんだ」


 バラッドが口の端からヨダレを垂らした。


「こいつ……っ!」

「シーリスが相手をする」


 と、横から女賢者が出てきた。


「シーリス……!」

「シーリスなら平気。あなたに抱かれるから、占いをお願い」

「ほう、こっちの賢者様も美人じゃねーか。気に入ったぜ」


 言って、バラッドがシーリスを引き寄せる。

 そのまま顔を寄せていった。


 彼女は避けようとしない。


 ぶちゅっ、と音を立て、バラッドがシーリスの唇を奪った。

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