7 セラ、意に添わぬ相手に体を許す1《聖女たちSIDE》

「ねえ、そのバラッドっていう占術師ならロメロ様……じゃなかった、ロメロの居場所が分かるのよね?」


 セラがたずねた。


「私の聖女スキルでさえ、ロメロの居場所を完全につかめなかったのに――」

「いくら聖女といっても、人探し専門ジョブってわけじゃないでしょ」


 と、女勇者のマリンが言った。


「占術師はそれ専門のジョブだからね。運勢を見たり、何かを探したり、って点なら聖女をも凌ぐ――まして、そのバラッドは大陸一と言われる占術師だし」

「ただ、女好きなのでしょう?」


 と、剣聖姫のエルザが言った。


「かなり女癖が悪いとか……わたくし、不安ですわ。そんな男に会いに行くのは」

「もしかしたら、報酬代わりにシーリスたちの体を要求してくるかも」


 ぽつりと言ったのは女賢者のシーリス。


「体を? 冗談じゃないわ!」


 セラは思わず叫んだ。


 同時に、先日の出来事を思い出す。

 酔った勢いも手伝い、出会ったばかりの青年貴族と一夜を共にしたことを――。


 今思えば、取り返しがつかないほど軽率な行為だった。

 婚約者には絶対に話せない秘密だった。


 バレてしまったら、間違いなく破談だろう。

 まさしく墓まで持っていく秘密になってしまった……。


「? どうかしたの、セラ? 何か考えこんじゃって」


 マリンがキョトンとした顔になった。


「バラッドに処女奪われちゃったりしてね、ふふふ」

「ち、ちょっと、やめてよ」


 ニヤニヤ笑うマリンに、セラは思わず声を上げた。


 ばつの悪い思いだった。

 自分はとっくに処女ではないのだ。


 それを知っているのは、仲間内ではシーリスだけ。


 そのシーリスは黙っていた。


「いざとなれば、シーリスがその男と寝る」

「えっ」

「シーリスは、そういうことは平気。今までも散々してきた。目的のためなら、男だろうと女だろうと抱かれる」


 淡々と告げるシーリス。


 彼女にとってセックスとは愛情表現ではなく、条件交渉の武器程度の扱いなのだろう。

 そこまで割り切れることには、素直に感嘆する。


「まあ、好みのタイプならあたしも抱かれてあげてもいいかな?」


 マリンがニヤリと笑った。

 こちらは単に肉食系なだけだ。


「とにかく、そのバラッドさんに会ってみましょう。どんな条件を出してくるのかも、実際に会わなければ分かりませんし」


 と、エルザが促す。


「そうよね。行きましょう――」


 言いながら、セラは嫌な予感を覚えていた。


 これ以上、体を汚されたくはなかった。

 これ以上、婚約者に顔向けできない行為をしたくなかった。


 そして、これ以上ロメロに対して罪悪感を――。


(……って、なんでロメロのことを思い出すのよ。私ったら!)

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