4 妖怪の願い

「これで『人間に戻る』という私の望みは絶たれた……か」


 妖怪がうなだれている。


 うーん、くノ一たちをさらった悪い妖怪ではあるけれど……実際に悩んでいる姿を見ると、かわいそうに感じてしまう自分がいた。

 しょうがない、乗りかかった船だ。


「俺がやってみようか。妖怪を人間に戻す、っていうのを」

「えっ」

「絶対確実じゃないから期待はするなよ」


 釘をさしておく。


「【元の姿に戻れ】」


 念を乗せた言葉を発する。


 しーん。

 何も起きなかった。


 あ、そうか。

 俺は彼女の元の姿を知らないから、これは実現しないんだ。


「やはり……だめか」


 がっくりする妖怪。


「さあ、殺せ」

「いや、そこまで言われると、さすがにかわいそうになってくるし……」


 俺はなおも考えた。

 彼女を元に戻す方法を――。


「あ、そうだ。こういうのはどうだ? 【呪いを解除しろ】」


 呪い自体の効果をなくすのであれば、イメージするだけで実現しないだろうか。

 すると、


 るおおおおおおおおおおむっ。


 突然、不気味なうなり声が響いた。


「うっ……おおおおおっ……!?」


 妖怪が苦しみだす。


「お、おい、大丈夫か?」

「な、何かが……私の中から、出ていく……くうっ……」


 妖怪の全身から黒いオーラが湧き立ち、そのオーラは髑髏の怪物の姿となって実体化した。


「なんだ、こいつは……!?」


 さっき妖怪に刻まれていた髑髏のマーク――おそらく呪いの紋章か何かだろう――が妖怪本体から離れ、実体化したように見えた。


「呪いを解除しろ、っていう思念だったから、呪いそのものを妖怪から引きはがせた、ってことかな?」


 おかげで呪いの方は実体化してしまったようだが――。


「ロメロ……」


 不安げなスミレ。


「分かってる。あいつを倒さないと、他の人間が呪われそうな感じだな」


 俺はふたたび思念を集中した。


 集中しながら、対応策を考える。


 こいつは、そのまま倒してしまっていいものだろうか?


 例えば、爆散させると呪い自体が周囲に飛び散るかもしれない。

 真っ二つに斬り裂いても、それぞれが新たな呪いとなってどこかの誰かにとりつくかもしれない。


 完全に消滅させないといけないな――。

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