3 洞穴

 俺はスミレとともに洞穴を進んでいた。


「そういえば、スミレは俺に『服従』するって言ってたな」

「言った。初めてのキスも捧げた」

「あ、ああ……」


 あらためて思い出すと、照れくささと罪悪感が同時にこみ上げる。

 この子、俺みたいなオッサン相手にキスしたりして嫌じゃなかったのか……?


「あたしが自分の意志でしたことだから。ロメロは気に病まないで」


 俺の内心を読んだかのようにスミレが言った。


「むしろ、あたしの方こそ心配。ロメロに不快な思いをさせてしまった」

「い、いや、不快だったわけじゃないんだ。ただ驚いただけで――」

「……よかった。嫌な気持ちにさせたかと」


 スミレが安心したような様子を見せる。


「スミレの方こそ気に病んでたんだな」


 俺は彼女の頭をぽんっと撫でた。


「もっと早く話すべきだったか。悪かった」

「ロメロは悪くない……ありがと」


 スミレがはにかんだ笑みを俺に向ける。


 やっぱり、可愛いな。

 年甲斐もなく照れてしまう。


 あ、可愛いっていうのは恋愛的なアレコレじゃなくて、保護者的な感覚というか、そういうアレだ。


 うん、きっとそうだ。


 ドキドキする胸を抑えつつ、俺は自分の気持ちを整理する。




 俺たちは、さらに進んだ。

 洞窟の奥深くへとたどり着く。


「なんだ、これは――」

「みんなが……」


 俺とスミレは、そこで立ち尽くした。


 大勢の『忍者』たちが触手に捕らわれている。

 全員がくノ一――つまり、女の『忍者』だった。


 触手は、タコに似た姿のモンスターから伸びている。


「また、私の獲物が来たか……!」


 モンスターが告げた。


「このモンスター、知性があるのか……」

「モンスターではない。私は妖怪」


 と、タコもどきが告げる。


「妖怪?」


 どう違うんだろう?


「俺はその人たちを助けに来たんだ。知性があるなら、彼女たちを放してくれ」

「それはできない。私は人間に戻るために、彼女たちを必要としている……」


 と、妖怪。


「人間に戻る?」

「私はとある妖術師に呪いを受け、妖怪にされたのだ……!」


 妖怪が怒気をにじませた。


「人間に戻るためには九十九人の新鮮な乙女の生気が必要だという……だからこそ、ここでくノ一たちを狙った……邪魔はさせんぞ」

「そう言われても、彼女たちを無理やりさらったんだろ?」

「無理やりではない。私が妖術で意識を混濁させ、『あなたのために生気を差し出します』と言わせるように洗脳した」

「今、洗脳って言ったぞ」

「無理やりではない」

「いや、無理やりだろ」


 俺は右手を突き出した。


「【解放しろ】」


 とりあえず手近の触手に向かって命じる。


「ううっ……な、なんだ、この力――」


 その触手は自然とほどけ、捕らわれていたくノ一は地面に投げ出された。


「この調子で全員取り戻すか」

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