2 依頼

「スミレは里の誰よりも優れた力を持っています。わずか五歳で『下級忍者』に、七歳で『中級忍者』、十歳で『上級忍者』になりました。そして十四歳にして史上最年少の『忍者マスター』になった――それが、去年のことです」


 と、里長。


「彼女に勝てる者などおらず、冒険者の世界に行っても、瞬く間に最上位ランクであるS級へと到達しました」

「最年少記録か……スミレってすごいんだな」

「えへん」


 俺の言葉に胸を張るスミレ。

 ドヤ顔だった。


「ですが、それが心配でもありました」


 里長が表情を曇らせた。


「心配?」

「あまりにも順調すぎるからです。挫折を知らない者は、いざ壁に当たったときに意外な脆さを見せることがあります。スミレには――そんな『壁』が必要ではないかとずっと思っておりました」

「壁……」

「そして、その心配は杞憂のようでした」


 里長は一転、笑顔で俺を見つめた。


「あなたに出会えたからです。スミレにとって、自分よりもはるかに上の力を持つ者の存在が――自分自身にいい影響を与えたのだと思います」

「スミレは一番じゃない。でも、だからこそもっとがんばれる」


 スミレが微笑む。


 目指すべき先が見えた、ってことだろうか?


 俺自身は何もしていないけど、彼女がなんらかのいい影響を受けたのであれば何よりだ。

 なんといっても、才能にあふれた天才忍者だからな。


「ですから、これからもスミレのことをよろしくお願いします。『超越者』殿」

「は、はい、俺でよければ……」


 深々と頭を上げる里長に、俺もかしこまってしまった。


「話は変わるのですが……実は、あなたに一つお願いしたいことがあります」


 里長が俺を見つめた。


「なんでしょうか? 俺にできることであれば、やらせてもらいますが」

「実は里の南側にとある洞穴があるのですが……そこで訓練をしていた者たちが先日から戻ってこないのです」

「遭難した、とか?」

「洞穴の道順を熟知している者が同行したので、迷っている可能性は低いと思います。それに何度か人を送りましたが、誰も彼らを見つけられませんでした」

「それを、俺に探してほしいと?」


 俺の問いにうなずく里長。


「『超越者』の力をもってすれば、可能かもしれないと思い……」

「分かりました。さっきの情報のお礼に、なんとか探してみます」


 俺は二つ返事で了承した。


「その後で、さっきの鍵の話をもう少し詳しく教えていただけますか?」


 たぶん、今の依頼が情報の対価なんだろう。

 鍵の話を詳しく聞きたければ、それなりのものを示せ――と。


 相手は忍者の里長なんだから、それくらいのことは考えているだろう。

 俺だってなんでもかんでも好意に甘えるつもりはない。


「恐れ入ります。洞穴の件を解決いただけたなら、必ずや」


 里長は俺の推測を肯定するように頭を下げた。

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