9 セラ、酔った勢いで大人の階段を上る3《聖女たちSIDE》

 翌朝――。


「んっ……」


 まどろみの中、セラはゆっくりと上体を起こす。

 一糸まとわぬ裸身には、昨夜の行為の火照りが残っていた。

 両足の付け根に何かが挟まっているような違和感を覚える。


「あー……やってしまったわ」


 セラは頭を抱えた。


 ベッドの横には、美しい青年が眠っている。


 そう、セラは彼と一夜を共にしたのだ。


 ラバーナが誘ってきたのはダンスの後。

 酔った勢いや彼からの熱烈なアプローチもあり、半ば衝動的に彼と寝てしまったのだ。


「うう……初めてだったのに。どうしよう……」


 婚約者を裏切ってしまった。

 というか、こんなことが知られたら間違いなく破談だ。


 どうしよう、どうしよう……と頭を抱えていると、ラバーナが目を覚ました。


「昨夜は素敵だったよ、セラ」


 すでに呼び捨てだ。


「君、処女だったんだね?」


 勝ち誇ったような顔だ。

 逆にセラは敗北感とも屈辱感とも分からない、嫌な気持ちが芽生えた。


「ええ、まあ……」

「あ、責任取って、とかはなしだからね」


 ラバーナが苦笑交じりに言った。


「悪いけど、僕は遊びのつもりだったから……」

「えっ」

「婚約者がいるんだろ? なーに、初夜のときに初めてのフリしておけばバレないバレない。それより、今後もときどき会わないか? 割り切った大人の関係で――」


 軽薄な口調でぺらぺらと調子のいいことをさえずるラバーナ。


(こんな男だったなんて……!)


 あらためて――なぜこんな男に肌を許したのか、と後悔がこみ上げる。

 最悪の初体験だった。


(これも全部、ロメロのせいよ!)


 セラは心の中で絶叫した。


 きっと心の片隅に、あのオッサンへのモヤモヤを払拭したい気持ちがあったからだ。


 セラが純潔を失ったのは、全部――あの男のせいなのだ。


 半ば八つ当たり気味に、彼女はそう決めつけていた。

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