8 セラ、酔った勢いで大人の階段を上る2《聖女たちSIDE》

 セラはいまだ男を知らない。


 婚約者のフィリップ王子とはキスまでの経験はあった。

 婚前に性交渉をする、というのはタブー視されている雰囲気で、彼とはキス以上に踏みこんだことはない。


 だが、セラは年頃の少女として性について人並みの興味は持ち合わせている。

 いや、むしろ人並み以上かもしれない。


 だから、本当は早く体験してみたかった。

 友人との話や『薄い本』と通称される激しめの恋愛小説などで、知識だけは得ている。


 それを自分でも味わってみたかった。


 好奇心を押さえるのに苦労するほど、彼女の興味は膨らんでいた。


(素敵――)


 異国の美青年と踊りながら、セラは陶然となっていた。


 もし彼が初めての相手だったら――。

 つい、そんな夢想をしてしまう。


 もちろん、婚約者がある身だし、そもそも婚前にそう言ったことは許されないのだが――。


 彼はダンスの名手のようだった。

 巧みなリードで心地よく踊れる。


 間近で見ると、ラバーナは本当に美男子だ。

 酔いも手伝い、うっとりと気分が高揚する。


「あなたは本当に美しい……」


 ラバーナがささやいた。

 少しずつその顔が近づいてくる。


「だ、駄目、私には婚約者が――んっ……」


 みなまで言わせず、彼がセラの唇を奪った。


「はふ……ぅ」


 重ねた唇から、悩ましげな息がもれる。

 婚約者を裏切って他の男にキスを許した罪悪感よりも、背徳的な興奮が上回った。


 体の芯に電流のような痺れが走っている。

 全身が甘く疼いていた。


(私……やっぱり酔ってる……このまま流されちゃ駄目……)


 自分に言い聞かせようとするが、甘い口づけの陶酔感が意識を蕩かせていく――。




 ……その後、酒を少し飲んだせいか、意識がふわふわとしていた。

 ほろ酔いでいい気分である。


「私ともう少しお話しませんか、セラ様」


 現れたのは、ラバーナだ。


「ええ、喜んで……」


 セラは一も二もうなずく。

 たくましい手が彼女の腰に回された。


 軽く尻の辺りを撫で回された気がしたが、気にならなかった。

 もう一方の手が、気が付けばセラの胸をまさぐっている。


 平時ならたしなめるところだが、セラはますます陶然となっていた。


 もっと触れてほしい、とさえ思っていた――。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る