7 セラ、酔った勢いで大人の階段を上る1《聖女たちSIDE》

「ここが東方大陸……」


『救世の乙女たち』――聖女セラ、女勇者マリン、剣聖姫エルザ、女賢者シーリスの四人は海を越えて、この大陸にやって来た。

 ロメロがここにいる、と情報をもらったからだ。

『女神の使徒』と名乗る組織から。


「あのオッサンを探さないとね」

「わざわざロメロなんかに会うために海を渡るとはね……あーあ」


 マリンがため息をついた。


「仕方ありませんわ。『服従』を解かないと」


 同じくため息をつくエルザ。


「シーリスの中に、妙な気持ちが残ってる……ロメロのことを考えると、胸が熱くなるときがある……はっきり言って、気持ち悪い」


 シーリスが顔をしかめる。


「きっと『服従』のせい……ロメロに会って、解除させる」

(私だけじゃなくてシーリスも……)


 セラはシーリスを見つめた。


 ロメロに対する不思議な感情は、セラの中にもあった。

 冴えないオッサンだと馬鹿にする一方で、なぜか恋心にも似た甘酸っぱい気持ちを彼に対して抱いている。


 心の中に相反する二つの気持ちが渦巻いているのだ。

 しかも、後者の感情は日増しに大きくなっていくようだった。


(まさか……このまま私がロメロに恋をするなんてことは……いえ、ありえないわ!)


 もしかしたら、これは洗脳に似た能力ではないか?

 最近ではそう考えている。


 この先、ますます自分の思考や感情があの男に好意的になっていくかもしれない。

 洗脳効果によって。


(絶対に、嫌!)


 セラは心の中で叫ぶ。


 絶対に――洗脳を解除しなければならない。




 東方大陸最大の国家であるドーラルドの王城――。


「これは救世の乙女たち! ようこそおいでくださった!」


 ドーラルド国王がセラたちに満面の笑顔を向けた。


「お招きにあずかり光栄です、王よ」


 セラたち四人は優雅に一礼する。


「歓迎の宴の準備はできております。どうかおくつろぎを。ささ」


 国王に従い、宴の会場へと向かう。

 そこには数十人単位の王族や貴族たちがそろっていた。


 いずれも美男子である。


「うわー、この前と同じパターンね……」


 言いながら、セラは横目でマリンを見た。


 案の定、目を爛々とさせている。

 また、今夜もいつものようにこの中の誰かとアバンチュールを楽しむのだろう。


「ま、私にはそんなアバンチュールはないんだけど」


 婚約者がいるし――と、内心でつぶやいたところで、参加者の一人と目が遭った。

 浅黒い肌にターバンを巻いている。

 エキゾチックで掘りの深い顔立ちにドキリとした。


 婚約者がいるのに、と思っていても、胸のときめきを完全に抑えることはできなかった。


「お会いできて光栄です、セラ様。僕はラバーナ。砂漠の国で貴族をしております」


 異国の美青年は彼女の手を取り、キスをした。


「こちらこそ、ラバーナ様」


 セラが会釈する。


 ラバーナは中々彼女の手を放そうとしない。


 もう一度セラの手の甲に熱い口づけをすると、


「一曲踊りませんか、聖女様」

「ええ、喜んで」


 ラバーナに誘われ、セラはホールの中央で踊った。

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