2 ヤマタノオロチ1


「ヤマタノオロチ?」

「かつての英雄コノハ・ブラッドベルが封じた最強の八つ首竜――」


 スミレがうめく。


 目を凝らすと、確かに八つの首を持つ巨大な竜だった。

 全身の鱗は燃えるような赤。


 八つの頭からそれぞれ炎や稲妻を吐き出し、周囲を焼き払っている。


「その力はたった一晩で東方大陸の34.3パーセントを焼き尽くしたという……」

「そ、そんなにすごい奴なのか」


 俺はゴクリと息を飲んだ。


「止めに行く。スミレはここで待っていてくれ」

「いえ、あたしも行く」


 彼女を下ろそうとしたが、反対された。


「役に立てるか分からないけど、あたしも一緒に行きたい」

「……じゃあ、俺の側から離れるなよ」


 迷ったものの、彼女はその『ヤマタノオロチ』とやらの情報を持っているだろうから、連れて行った方がいいかもしれない。

 いくら俺に『超越者』の能力があっても、どんな不測の事態が起こるかは分からないからな。


 それに、俺だってまだ自分のジョブ能力を完全に使いこなせているわけじゃない。

 この能力のすべてを知っているわけでもない。


 備えは、必要だ。




 俺はスミレを連れ、ヤマタノオロチの元まで飛んだ。


 どうやら、すでに八つ首竜と東方大陸の人たちとの戦いは始まっているようだった。

 上級ジョブ『サムライ』や『忍者』たちが攻撃を繰り出す。


 が、相手の体が大きすぎて、致命傷には程遠い。


「でかいな……」


 近くで見ると、ますます大きく感じられた。


 全長は――おそらく100メートルを超えてるんじゃないだろうか。


「【消え去れ】一発で消滅させられるかな……」


 今まで戦った敵の中で、間違いなくもっともサイズの大きな敵である。


「あるいは【砕け散れ】を何発か食らわせるか……いや、それなら【消え去れ】の連打でも一緒か」

「攻撃方法には気を付けて」


 スミレが言った。


「あいつは体内に炎の気を溜めている。爆撃系の技だと、その炎に引火して大爆発を起こす可能性があるの。あるいは体の一部を消し飛ばしても爆発するかも」

「大爆発――」

「半径何百キロっていう範囲に被害が出るかも」

「めちゃくちゃ大ごとじゃないか……」


 サラッと説明するスミレに、俺は思わず額を押さえた。


「500年前、コノハ・ブラッドベルは倒すことをせず、封印にとどめた。それは――うかつに攻撃すれば、オロチが爆発するからだ、って伝承にあった」

「昔の『超越者』が倒せなかった敵か」


 俺は表情を引き締めた。


「さて、どう戦うか」

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