6 海神との勝負

「ば、馬鹿な、当たらない――」


 デルフィーナが驚愕する。


「おのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれ……」


 さらに槍を繰り出してくる海神。

 俺はそれをすべて見切り、避ける。


「おのれぇっ!」

「ほい」


 キリがないので、俺は穂先を指でつまんで止めた。


「ぐっ!?」


 膂力に任せて、彼女の攻撃を完全に制止する。


「ぐぐぐぐぐぐぅっ……」

「無理だよ。諦めてくれ。あんたの力じゃ俺は殺せない」


 俺は彼女を諭した。


「はあ、はあ、はあ……な、なぜだ……人間ごときに、わらわが……」


 がくりとその場に膝をつく海神。


「大丈夫か?」


 いくら神様とはいえ、さすがに心配になった。


「ええい、人間に気遣われるほど落ちぶれては――ん?」


 海神がふと何かに気づいたような顔をした、


「そ、それは――」

「えっ」

「お前の手に刻まれた紋章だ」


 デルフィーナが俺の手の甲をじっと見つめている。


「まさか、『超越者』の紋章……?」

「まあ、いちおう」

「なるほど、『超越者』であれば、わらわが敵わぬのも道理。それは神や魔王をも超えた力だ」


 うなずいた俺に海神が微笑んだ。


「……確かに魔王も一撃で倒せたけど」

「当然だ。お前の力は文字通りすべてを超越する。歴代の『超越者』には神々も逆らえなかった」


 と、海神。


「なんで俺にこんな力が宿ったんだ?」


 聞いてみた。


「選ばれた、ということだろう」

「選ばれた?」

「『超越者』の紋章にな」


 デルフィーナの笑みが深くなる。


「紋章に聞いてみなければ、その理由は分からぬ」

「紋章に……聞く?」


 できるのか、そんなことが。


「ともあれ、お前が『超越者』であれば、これ以上の敵対はよそう。わらわではお前に勝てんし……何よりも、肌を見られたのが『超越者』であれば、怒るほどのこともあるまい。お前がその気になれば、わらわを好きにすることができる。この体を自由にすることも、な」


 言って、流し目を送る海神。

 ゾクリとするような色香だ。


「え、えっと……さすがに女神様を抱くのは罰当たりすぎる気がする」

「ふふ、冗談だ。まあ、お前が望むなら冗談ではなくなるが――」


 デルフィーナが肩をすくめた。


「わらわを助けてくれたことと、先ほどの無礼の詫びを兼ねて――わらわの宮殿で歓待させてくれ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る