3 東方大陸に向かって

 俺はスミレを抱きかかえ、空を飛んでいた。


「すごい……速い……!」


 風圧に目を細めながら、つぶやくスミレ。


「落ちないようにしっかりつかまってろよ」

「了解」


 スミレは俺の首筋にギュッとしがみついてくる。


 ……正直、少しドキッとした。


 相手は十代半ば。

 俺の半分以下の年齢の女の子だっていうのに。


 まったく、いい年して何考えてるんだか。

 俺は内心で苦笑しつつ、飛行に意識を集中した。


「……っと、高度が落ちてきたな。【真っすぐ飛ぶ】」


 定期的に、念を込めた言葉を告げる。


 どうやら飛行の【リアライズ】には効果時間があるらしい。

 体感だと十五分程度。


 その時間を過ぎると、徐々に高度が落ちてくる。

 少しずつ飛行の効果が薄れていってるんだろう。


 そのたびに『真っすぐ飛ぶ』と念じなおして、効果を補強する。

 その繰り返しで、俺たちは飛行を続けていた。


 スピードはかなりのもので、この一時間でもう何百キロも飛んだと思う。

 すでに中央大陸を飛び出し、今は海の直上である。


 この海を越えると東方大陸にたどり着く。

 そこにある小さな島国が、スミレの故郷だった。


「ロメロはあたしを『服従』させないの?」


 唐突にスミレが言った。


「えっ?」

「伝承で知ってる。『超越者』は七つの最上級ジョブを従える力がある、と。その七つとは『聖女』『勇者』『剣聖』『賢者』『忍者マスター』『武神』『竜騎士』――つまり、あたしを従えることができる」


 スミレが俺をジッと見つめる。


 抱き合ったままだから、めちゃくちゃ顔が近い。

 そんな密着状態で『あたしを「服従」させないの?』なんて言われると、さすがに変な気分になってくる。


 いや、落ち着け俺。

 相手は十代半ばの年端も行かない娘だ。


 邪まな考えを抱くんじゃない。


 犯罪的だ……っ。


「俺は誰かを従えたいとは思わない」


 と、返答する俺。


 まあ、セラたちのことは『服従』させたわけだが、あれはあくまでも魔王の支配下から解き放つためだ。


 だから、その後に彼女たちを解放した。


 今では、セラたちは俺への『服従』の気持ちなんてなくなっているはずだ。

 ……だよな?


 おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおんっ。


 ふいに、雄たけびような声が聞こえてきた。

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