2 セラたち、『女神の使徒』と接触する2《聖女たちSIDE》

 話がおかしな方向に進んでいた。


 もともとは、こちらがロメロの情報を探るために老婆に接触したのだ。

 だが実際に会ってみれば、むしろ向こうの方から用件を切り出し、協力を持ち掛けている。


(……怪しいわね)


 こうなると罠である線も考えなくてはならない。


 セラたちがロメロを探しているのを利用して接近してきたのだろうか。

 自分たちに――本当は何をさせようというのか。


「協力というけど、私たちに何をしろと言うのかしら?」


 セラは慎重に言葉を選びつつ、老婆を見据えた。


 嫌な目だと思った。

 お前のすべてを分かっているぞ――そう語りかけてくるような瞳。


 自分がロメロに対して抱いている感情……自分自身でもその正体を測りかねている感情を、正確に見抜かれている気さえする。


「四人の乙女……お前たちは世界最高の栄誉を手に入れた。誰もがお前たちを称えるだろう。お前たちを伴侶にしたいという男など、星の数ほどいよう。富でも権力でも望むままに手に入るだろう」


 老婆が四人を見回す。


「にもかかわらず、お前たちの中には『不満』が見える。あるいは『不安』か? 解決しなければならない何かがある――」

「いい加減にしなよ」


 マリンが怒りの表情で進み出た。


「もったいぶった言い方はイライラするのよ」

「具体的に仰ってくださいな」

「話がまどろっこしい」


 エルザとシーリスも左右から詰め寄る。


「あたしの悪い癖だねぇ……話がまだるっこしい……いや、悪かったよ」


 老婆が笑った。


「お前たちはあのロメロに『服従』しているのさ。世界の頂点に立つ力を持つお前たちに、付き従わなければならない相手がいる――その屈辱を晴らしたいだろう?」

「なぜ、それを……!?」

「『超越者』については、あたしもちょっと知っていることがあってねぇ」


 老婆がまた笑った。


「何せ500年前に『超越者』がいた里であたしは育ったからね。いろいろと情報を持っているのさ」

「『超越者』の情報……?」


 セラが眉を寄せる。


「じゃあ、教えて。あたしたちの『服従』状態を解除するには、どうすればいい?」


 マリンがたずねた。


「簡単さ。相手を『服従』させればいい」

「えっ」

「もちろん、力ではかなわないだろう。いくらお前たちが最上級ジョブといっても、相手はその上に君臨する唯一絶対のジョブ――だから、力ではなく『情』で立ち向かう」

「『情』で……」

「おっと、また話がまだるっこしくなったねぇ。要は、ロメロを惚れさせればいいのさ。虜にさせればいいのさ」


 老婆が四人を見回した。


「お前たちはいずれも絶世の美少女――まあ、相手はちょっと年が離れているけど、とにかく奴を惚れさせて、自分の言うことなら何でも聞く――って状態にするんだね。『超越者』はね、自分が惚れた相手を『服従』させられないんだ。そういう能力制限があるんだよ」

「能力制限……」

「『超越者』の力は基本的に思念や感情をもとにしているからねぇ。その辺の絡みなんじゃないか」

「惚れさせろ、とは随分と単純な話ね」


 セラが言った。


「神話のころからの真理さ。男は惚れた女には弱い、ってね。ロメロはあんたたちに良い感情は持っていない。恨んでいるかもしれないし、憎んでいるかもしれない。でも、案外そういう感情が――裏返って愛情になることもあるからねぇ」


 老婆がみたび笑った。


「で、お望みどおりにロメロを落とせたとして――」


 セラが老婆をにらんだ。


「あなたは私たちに何をしてほしいの? 何を望むの?」

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