第5章 海神と海獣編

1 セラたち、『女神の使徒』と接触する1《聖女たちSIDE》

 聖女セラ、女勇者マリン、剣聖姫エルザ、女賢者シーリスの四人はロメロを求めて、旅だった。


 目的は彼にもう一度会うこと。

 彼にかけられた『服従』状態を解除すること。

 そして――四人それぞれの気持ちに決着をつけること。


「そういえば、この間のパーティの後、胸に紋章が浮かんでいたけど……その後はどう? 変わりはないの、マリン?」


 セラがマリンにたずねた。


 先日の魔王討伐祝勝パーティの夜、マリンはとある参加者と一夜を共にしたらしい。

 それ自体は奔放な彼女らしいエピソードなのだが――。


 翌朝、彼女の胸には花のような形をした紋章が浮かんでいた。

 すぐに消えたとはいえ、その異変がセラは気になっていた。


「うーん……特に変わったことはないかな」


 と、マリン。


「そっか、よかった……」

「そういえば、シーリスさんもあの夜は姿が見えませんでしたね」


 エルザが思い出したように言った。


「デッカード帝国の皇太子にアプローチされたから、夜の相手をしていた」


 こともなげに告げるシーリス。


「ちなみにセックスは下手だった。いちおう気持ちいい振りはしたけど」


 女勇者マリンも奔放で恋多き女だが、男性経験という点ならシーリスが四人の中でもっとも豊富である。

 まあ、彼女の場合は、恋愛感情抜きで男と床を共にすることがほとんどなのだが――。


「私に一目ぼれしたみたい……何かに利用したいから、つなぎとめるために」

「シーリスって男を利用する目的以外で抱かれることってないの……?」


 セラが苦笑交じりにたずねる。


「恋愛は後回し。まず成り上りたい。女としての武器はそのために使う」


 シーリスが淡々と告げた。


「あ、それと……」


 言って、彼女が胸元をはだける。

 セラやマリン、エルザに比べると控えめなサイズの膨らみ。


 その間に花のような形をした紋章が一瞬浮かんで消えた。


「私にもこの紋章が出るようになった。常時じゃないけど、ときどき」

「……マリンと一緒じゃない」」


 セラは眉を寄せた。




 ロメロの居場所を探すため、セラたちは王都に逗留していた。

 あまり大っぴらに探すと、何かを勘繰られるかもしれない。

 だから、基本的に表立った捜索はしていない。


 主にシーリスの伝手を頼り、裏社会の情報屋を中心にロメロの行方を探っていた。


 それから三日。


 凄腕の情報屋だという老婆が彼女たちの元にやって来た。


「聖女、勇者、剣聖、賢者――お前たちが救世の乙女か」


 血のような赤いローブに長い杖。

 魔法使い――というより、魔女という言葉が似あう老婆である。


「お前たちがロメロを探しているならちょうどよい。彼を我が陣営に引き入れたい。協力を願えるか?」

「あなたたちの陣営に引き入れる――とは?」


 戸惑いながらたずねるセラ。


「お前たち、彼とは因縁があるのだろう?」


 魔法使いの老婆は直接質問には答えず、ニヤリとった。


「見えるぞ……お前たちの情念が……くくく。愛憎入り混じった……まあ、『憎』が上回っている者もいれば、その逆もいるようだが……」


 セラはドキリとした。


 おそらく老婆は精神魔法系に長けているのだろう。

 自分の――恋心を見抜かれているかもしれない。


 他のメンバーには隠している、この気持ちを。

 表向きはロメロを憎んでいる、ということにしている、その本心を――。


「どうだ? 我ら『女神の使徒』に協力せんか? お前たちにもメリットがあるぞ……くくく」

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