10 旅立ち

「もう一回飛ぶ――にしても危険だな」


 俺はスミレの話を思い出しながら言った。


 世界の最果てに向かうと、時空のねじ曲がった場所に閉じ込められてしまう――。

 仮に閉じ込められたとして、俺の能力なら脱出できるんだろうか?


 できそうな気がするけど、試してみてダメだったら永遠に戻ってこられない。

 俺の思念具現化能力が、どこまで効果を発揮するか――というのは分からない。


 神や魔王をも退ける力、というなら、それこそできないことはないのかもしれないが……。

 人間という器を通して出る力である以上、限界はあるかもしれない。


「試すのは……やっぱりリスキーすぎるよな」


 俺は苦笑した。


「けど、拒まれると逆に気になるんだよな。『世界の最果て』に何があるのか――」


 そういうのを突き止めてこそ『冒険』者って感じがする。


「あ、もしかしたら」


 スミレが何かを思いついたような顔で言った。


「どうした?」

「あたしの里に行けば、何か分かるかも」

「里?」

「忍びの里。あたしが『忍者マスター』のジョブを身に着けた場所。ついでに生まれ故郷」

「スミレの故郷か……」

「一緒に行く?」

「忍びの里って、もしかして隠れ里とかじゃないのか? 俺が行ってもいいのか?」

「ロメロは『超越者』のジョブ持ちだからきっと歓迎される」


 と、スミレ。


「あと、両親にも紹介したいし」

「……なんか別の意味に聞こえるんだが」

「既成事実……になったらいいな」

「えっ」

「……なんでもない」


 スミレは顔を赤くしてうつむいた。




 彼女の故郷は東方大陸にあるということだ。


 俺は彼女を連れて、空路からそこへ向かうことにした。


「まず、おおざっぱな方角を指示するから真っすぐ飛んで、近づいたら細かい指示をあらためて出すね」

「ああ。俺としても多分それが楽だと思う」


 俺の能力【リアライズ】は思念を具現化する能力。

 より詳しく言うなら、頭の中で思い浮かべた鮮明なイメージを現実の物質なり効果なりに具象化する。


 この『鮮明なイメージを作る』って作業が、意外に集中力を消耗するのだ。

 飛行するときも『まっすぐに飛ぶ』なら、最初にイメージを作ると後はあまり何も考えなくても飛び続けられる。


 だけど、その都度方向を調整する、となると、方向転換のたびにイメージを作りなおさなきゃならない。


 ここから東方までは結構な距離だし、長旅になると俺自身の消耗を抑ええることも考えなきゃいけないからな。


「じゃあ、方針も決まったところで――東方に出発だ」


 そして、俺はスミレとともに旅立つ。


 かなり行き当たりばったりに決めてしまった遠距離移動だけど……こういう生活も悪くない。


 気ままに生きる冒険者って感じがして――。

 俺は今の自分を、少し気に入っていた。

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