9 時空障壁

「ロメロは『世界の最果て』に行きたいの?」

「まあ、興味はあるな」


 スミレの問いに答える俺。


 右手に刻まれた『超越者』の紋章が一瞬変化し、地図の形になった。

 示された場所は『世界の最果て』。


 そこに何があるのか――。


『超越者』に関係する何か、だと思うんだけど。

 それがなんなのか知りたかった。


 ただ、直接そこまで瞬間移動することはできないようだ。


「そうだ、飛んでいくか」

「飛ぶ?」

「空を飛んでいけば、陸路や海路よりずっと早く着く。ちょっと行ってくる」

「待って。あたしも行きたい」


 ひょこっと手を上げるスミレ。


「えっ」

「あなたに、興味があるから」


 スミレが微笑む。


「ついていく」

「じゃあ――一緒に行くか」

「ん」


 右手を差し出すスミレ。

 俺はその手を握った。


「飛ぶぞ」

「了解」

「【飛行開始】」


 俺たちはふわりと浮かび上がった。


 上空百メートルほどの地点だ。


「えっと、『世界の最果て』はどっちの方角だ?」

「北にまっすぐ飛び続けると、ある」

「北か……よし、出発だ」


 俺たちは北に向かって飛んだ。


 ひたすら飛んだ。

 そうやって一体何百キロ飛んだだろう。


 飛行を始めてから一時間ほど経ったところで、



 ふいに、視界が歪んだ。




「えっ……!?」

「いけない――」


 焦ったようなスミレの声。


「時空障壁に捕らわれた……かも」

「なんだ、それ……?」

「『世界の最果て』は侵入者を拒む、って。もしみだりに侵入する者があれば、時間と空間がねじ曲がった場所に閉じこめ、二度と出さないとか……」

「そ、そういうことは早く言ってくれ――っ!」

「ごめんなさい。今思い出した」

「そ、そうか……って、まずいぞ、完全に捕らわれた――動けない……っ」


 体中に見えない何かが絡みついてくる感覚。


「くっ……【こいつらを振りほどけ】」


 ばちぃっ。


 俺の思念とともに、絡みつく何かははじけ散った。


 同じ要領でスミレも救う。


「あ、ありがと、ロメロ……」

「大丈夫だったか?」


 たずねるがスミレは無言だ。


「スミレ……?」

「素敵、だった」


 彼女はぽつりとつぶやいた。


「???」


 突然、何を言い出すんだ彼女は……。

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