4 500年前の『超越者』

 この世界にはジョブというものがある。


 女神ヴァルファリアによって与えられる、その人間の『資質』が具現化したものだ。


『ジョブの紋章』を得ることで、その資質は増大し、その資質に応じた『スキル』や『特性』を身に着ける。


 スミレの先祖――コノハ・ブラッドベルは、元々ただの町娘だったそうだ。

 剣にも魔法にも特に秀でているところはない、普通の町娘。


 が、十五歳のときに女神から『超越者』のジョブを与えられ、彼女の人生は一変した。

 あらゆる敵を、たった一言で打ち破る無敵ぶり。


 彼女を止められる存在はいなかった。


 世界最大の帝国も。

 世界最強のモンスターも。

 世界最悪の魔物も。


 彼女はたった一言で蹴散らした。


 そして――彼女はどんどん好戦的になっていった。


「自分の力を試したい。限界に挑みたい、って」


 スミレが説明する。


「ついには魔王に挑み、あっさりと退けた」

「ああ、それは魔王自身も言っていたな。詳しい事情は知らなかったけど――」

「その次に、コノハ様は神に挑もうと考えた」


 と、スミレ。


 魔王の次は神か……。

 まさに最強の存在への挑戦。


「で、どうなったんだ? そのコノハと神との戦いは?」

「戦わなかった」

「えっ?」

「コノハ様はその決戦の前に一人の男性と出会った。その方はコノハ様に戦いをやめるように説得した。結婚して平穏に暮らしたい、と」


 スミレが告げる。


「コノハ様はその願いを受け入れ、戦いを捨てた。そしてあたしたちの里を作った」

「里……」

「忍びの里。コノハ様のお相手が『忍者』だったから」


 と、スミレ。


「お二人の子孫は『ブラッドベル一族』として今に続いてる。あたしはその現当主」

「なるほど……じゃあ、スミレはそのコノハ様の直系の子孫なわけだ」

「そ。ただ、あたしに『超越者』のジョブは発現しなかった。歴代当主の誰にも――」

「もしかして、スミレは『超越者』になりたかったのか?」


 ふと思ったことをたずねてみる。


「あたしは――」


 スミレが言葉を詰まらせた。

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