2 四人の乙女の旅立ち2《聖女たちSIDE》

 三日後。


「お待たせ」


 出発の待ち合わせ場所に行くと、すでに三人とも来ていた。


「愛しい王子様とのお別れはすませた?」


 マリンがニッと笑う。


「ええ、互いの気持ちを確認してきたわよ。ロメロのことなんて、なんとも思ってないもの」

「それは当たり前でしょ。わざわざ言うようなこと?」


 キョトンとした顔になるマリン。


「あ……そ、そうよね」


 いけない、と思った。

 こういう言葉が口に出ること自体、自分がロメロを意識している何よりの証拠である。


「マリンこそ、誰かとお別れを済ませたの? あなたもそろそろ恋人を一人に絞ればいいのに?」

「嫌だね。あたしは色んな男と楽しみたいし、愛されたい」


 ふふん、を鼻を鳴らす女勇者。


「あいかわらず奔放ですわね」


 エルザがため息をついた。


「もう少し貞淑にならないと、そのうち殿方から見向きもされなくなりますわよ」

「あたしは女を磨いているだけよ。心配しなくても、男なんていくらでも寄ってくるから」


 マリンが笑う。


「あなたももっと色んな男を知ればいいのよ、お姫様」

「……わたくしは貞淑であれと育てられた王女ですのよ。マリンさんのようにはなれませんわ。ファーストキスだって、本来なら夫となる男性に捧げるはずだったのに。はあ……過去を消し去りたいですわ。あんな男にわたくしが唇を許すなんて」


 エルザがため息をついた。

『服従』のキスのことを思い出しているのだろう。


「もう一度あの男と会って、この気持ちを払拭しますわ――絶対に」

「シーリスは……キスでもそれ以上のことでも……あの男を利用するためなら、やる」


 と、シーリスが淡々と言った。


 彼女はクールに見えて野心が強いタイプだ。

 利用できるとなれば、いわゆる『女の武器』を使うことも躊躇しない。


 男性経験の数なら、この四人の中で一番多いのではないだろうか。


「あたしは嫌だね。いろんな男と寝てきたけど、あんな冴えないオッサンとだけは絶対嫌。キスしたことも屈辱よ」


 マリンが鼻を鳴らした。


「じゃあ、そろそろ出発しましょう。みんな、自分の気持ちに決着をつけられるといいわね」

「もちろん」

「ですわ」

「ん」


 こうして、四人の乙女は旅立った。

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