第4章 新・魔王軍編

1 四人の乙女の旅立ち1《聖女たちSIDE》

 セラたち四人はロメロを追って、旅をすることになった。


 その前に――彼女は故国に戻り、婚約者である同国の第三王子フィリップにそのことを説明しに行った。


「しばらく旅に出る? どうして? 魔王を倒したんだし、結婚に向けての準備を進めていこうよ」


 旅に出ることを切り出したとたん、フィリップは不満げな顔をした。


 もちろん、ロメロを追うということは話せない。

 彼が魔王を倒したことや、彼に服従したこと、そしてその儀式として彼にキスをしたことも含め――いっさいが秘密である。


「魔王を討ったとはいえ、私は未熟です。それを今回の戦いで思い知りました」


 セラは、表面上は殊勝な態度で告げた。


「あなた様の妻にふさわしい女になるため……もっと自分を磨きたいのです。聖女として。一人の女として」

「セラ……」

「ですから、今しばらく時間をください。必ず、あなた様の元に戻ります。フィリップ殿下――」

「……君がそうまで言うなら」


 フィリップがため息をついた。


「別れは寂しいな。僕がいないからって浮気しちゃだめだぞ」


 珍しく冗談を言うフィリップ。


 そのまま抱きしめられた。


「あっ……」


 フィリップの顔が近づいてくる。


 キスされる、と思ったとたん、全身がこわばった。


 唇が、重なった。


「ん……」


 婚約者との甘い口づけ――。


 そのはずなのに、なぜか悪寒が走る。

 恋しい相手との触れ合いに、心の片隅で嫌悪感を覚えていた。


 同時に、罪悪感を。


(ああ、ごめんなさい……ロメロ様……)


 自然にそんな気持ちが浮かんできた。


 そんな気持ちになった自分に驚く。


(どうして……? 私、あのオッサンに対して後ろめたさを感じている……? 婚約者とキスをするなんて、自然なことなのに)


 戸惑いはどんどん大きくなった。


 自分の中に……自分でもあずかり知らぬ気持ちが芽生え、それが肥大化していくような不安感があった。


「……どうしたんだい、セラ?」


 唇を離し、フィリップが不思議そうに首を傾げた。


「心ここにあらず、という感じだね」


 セラはドキリとした。

 心の片隅に――ロメロを、フィリップ以上に意識している自分がいるのだ。


(あんな冴えないオッサンに……何を考えているの、私は)


 苛立ちとともに、その気持ちを振り払う。

 モヤモヤとする。


「愛しいあなたに再会できて、幸せに浸っているのです」


 セラが微笑んだ。


 だが――だからこそ、そのモヤモヤを振り払うために自分は行くのだ。


 ロメロに再会し、今の気持ちに決着をつけてみせる。

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