10 忍者マスターの少女

「すごいな、あんた――いや、恐れいったぜ!」


 少年剣士――『剛剣士』リカードが俺の元に歩み寄った。

 がしっと俺の手を握り、感激したように見つめてくる。


「ふふ、リカードったら、すっかりロメロさんに心酔したみたいね」


 艶然と微笑みかけてきたのは、魔術師の美女――『大魔導師』ターニャ。


「素敵だったわ。惚れちゃいそう……うふふ」

「ど、どうも」


 これほどの美女から正面切って言われると、さすがにドキッとする。


「魔族の脅威を未然に防いでくれたうえに、我らを救ってくれた。礼を言うぞ、戦士殿」


 老武闘家――『武神』ゲオルソンさんが深々と一礼した。


「いえ、そんな……」


 さすがに恐縮する俺。


「いや、実際手ごわい魔族たちだった。あのまま戦っていたら、我らの中にも犠牲者が出ていたかもしれん」

「ロメロさんは強い。あたし、感服した」


 淡々と告げる忍装束姿の少女――『忍者マスター』スミレ。


 黒髪をポニーテールにした、清楚そうな美少女だ。

 年齢は十代半ばくらいだろうか。


「あなたとパーティが組みたい」

「俺と……?」


 突然の申し出に驚く俺。


「あなたのジョブ『超越者』は……うちのご先祖様と同じ」


 そっと耳打ちするスミレ。


「えっ」

「あたしの名前はスミレ・ブラッドベル……ご先祖様は500年前に活躍した『超越者』コノハ・ブラッドベル」


 500年前――って。


「あ、そういえば、魔王が言ってたな」




『まさか――本当に『超越者』なのか……! 500年ほど前に一度だけ見た……神や魔王すら歯牙にもかけない超常の存在……!』




「それが、君の先祖……?」

「あなたが『超越者』であることは、あまりおおっぴらに言わない方がいい。色々と面倒」


 スミレが言った。


「それとは別に、あなたにはすごく興味がある。もっと知りたい、近づきたい」

「興味って……」

「あなたはパーティを組まないの?」

「うーん……パーティにはちょっと嫌な思い出があるから、しばらくはソロかなぁ」


 答える俺。


「試しに一度、あたしと。もし気に入ってもらえたら、相棒にしてほしい」

「相棒か……」

「あなたの強さに惚れた」


 彼女が俺を見つめる。

 恋愛の意味じゃないのは分かってるが、『惚れた』なんて言葉を使われるとやっぱりドキッとするな。


「ぜひお願いしたい」


 スミレが詰め寄った。


「うーん……そこまで言うなら」


 パーティにいい思い出がない……といっても過去は過去だ。

 それに、セラたちとスミレは明らかに違う。


「俺も冒険者としては駆け出しだし、S級のスミレから学ばせてもらおう」

「約束」

「ああ、約束だ」


 俺たちは握手を交わした。


 それともう一つ――。

 彼女の先祖が俺と同じ『超越者』ってところにも、興味を引かれたんだ。

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