9 帝国の策動《帝国SIDE》

 キリア帝国。


 薄暗い神殿の中に、彼らは集まっていた。


 自らを『女神の使徒』と名乗る一団――その最高幹部たち。

 とはいえ、その名は彼らだけの中で通じるものだ。


 いわゆる秘密結社のようなものだった。

 今日はその定例会議である。


「この波動――『超越者』が500年ぶりに目覚めたようだ」

「伝説のジョブ『超越者』……」

「『想いの力』により世界の在り方や因果そのものにまで干渉、再構成する恐るべき能力者……」

「かつての『超越者』コノハ・ブラッドベルはその力で魔王を退け、神にまで挑んだという……」


 彼らは謳うように告げる。


「ぜひとも我らの一員として迎え入れたいものだな」

「ああ、いずれ世界を支配する我らの――大きな力となってくれるだろう」




 彼らは地下の格納庫に降りた。


 そこには全長二十メートルを超える巨大な像がある。

 黒い神像――。


「我らの元には魔王軍の残した兵器がある」


 そう、これは先の戦いで魔王ディルダインの軍勢から奪い取った兵器である。

 これを使う前に、魔王は討たれてしまったため、兵器を無傷で回収できた。


 その性能は一つの都市を数分で灰にするほど。

 運用に莫大な魔力がかかるが――そのための方策はいくつか準備してある。


 とにかく、運用さえスムーズにできれば、無敵の兵器となるだろう。


 とはいえ、やはり永続的に動かすのは難しい。

 もう一つ別に、戦力の柱がほしいところだった。

 だからこそ、


「魔王を討った『超越者』が手勢に加われば、万全」

「世界は我らのものとなる」

「史上唯一の、世界統一帝国の誕生だ」

「あれだけの実力者なら、引く手あまただろう。他国が彼を召し抱える前に、我が国の中枢に迎え入れなければ」

「だが、うかつに接触はできんぞ。『超越者』はその気になれば、国一つを軽々と破壊することもできる」

「我らとてひとたまりもない。奴の不興を買ってはならん」

「ああ、奴の気を引く方法を考えなければならん」

「そういえば、彼には仲間がいたようだが?」

「いや、どうやら離れたようだ」

「かの名高い聖女セラや勇者マリンたちか……」


 世間ではセラ、マリン、エルザ、シーリスの四人が魔王を討った『救世の乙女』として持てはやされている。


 だが、彼らは知っていた。

 本当に魔王を討った者は別にいる。


 そして、それは『超越者』のジョブ持ちだと。


「離れたといっても、元は仲間だ。それなりの情はあるだろう」

「ならば、彼女たちをエサに『超越者』を――ロメロ・ティーゲルを誘うか」

「悪くない」

「まず彼女たちにコンタクトを取ろう。ロメロの方も動向を常に追っておけ」


 彼らはほくそ笑んだ。

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