8 ロメロ、S級が苦戦する敵にも無双する2

 俺が取得した究極ジョブ『超越者』の能力【リアライズ】。


 それは俺が『考えたこと』『思ったこと』を具現化する能力だ。


 その発動は簡単。

 手の甲にある紋章に触れて『ON状態』にしたうえで、『思念』を乗せた『言葉』を発する、というもの。


 ただし、発動を成功させるにはある程度具体的なイメージが必要らしい。


 だから、たとえば『行ったことのない場所まで移動する』ということはできない。

 あるいは『美味い料理を出してくれ』といった漠然としたイメージを具現化することもできない。


 必要なのはイメージの『鮮明さ』と『具体性』だ――。


 俺はS級冒険者と魔族たちとの戦いを注視していた。

 思念消滅攻撃――【消え去れ】と魔族に念じれば、おそらく奴らは跡形もなく消え去るだろう。

 何せ魔王すら一撃で消滅する威力だ。


 ただし……巻き添えが出るかどうかは分からない。

 今のような『乱戦』状態で攻撃を放ち、S級冒険者に影響を出さずに、魔族だけ消し去ることはできるんだろうか?


 もし俺がここで【消え去れ】と告げ、S級まで消し飛ばしてしまったら――。

 そんな事態だけは絶対に避けなければならない。


 ……などと考えているうちに、ゲオルソンさんが魔族の一体と交戦状態に入った。


「ひゅっ、おおっ、おっ、おおおっ」


 独特の呼気のリズムとともに、連打を繰り出す老武闘家。

 空中だというのに、見事なバランス感覚だ。


 どががががががががっ!


 ほとんど一続きになった打撃音とともに、魔族が大きく吹き飛ばされる。


「て、てめえ……!」

「まだまだ若いもんには負けんよ」


 後退した魔族に、ゲオルソンさんがニヤリと笑った。

『剛剣士』リカードでさえ接近戦では分が悪い感じだったが、ゲオルソンさんの格闘能力はその上を行くのか。


「すごい武闘家だ――」


 やはり『武神』ジョブは伊達じゃない。

 と、


「いい気になるなよ!」


 別の魔族が魔法を撃ってきた。


「おっと、危ない……!」


 ゲオルソンさんは拳の風圧でそれを弾き落しつつ、着地した。


「今のは焦ったわい……調子に乗りすぎたか」

「無事?」


 と、『忍者マスター』のスミレが駆け寄る。


「さっきの魔法がかすって、少し怪我をした」


 苦笑するゲオルソンさん。

 その右肩から白煙が上がっていた。


「僧侶系の誰かに癒してもらってくる」

「じゃあ、あたしが代わりに攻撃する」

「うむ、頼むぞ」

「了解」


 言って、スミレが手裏剣と忍者刀を構える。

 魔族たちは、先ほどのゲオルソンさんの猛攻で警戒したように空中に浮いたまま。


 ――今なら、いけるか?


 俺はすかさず一番前まで走った。

 他のS級が攻撃を再開する前に――。


「【大きくジャンプする】」


 念を込めて大ジャンプ。

 一気に空中の魔族たちに迫る。


「まさかお前は――」


 近づく俺に、魔族の一体が青い顔をした。

 何かに、気づいたように。


「聞いたことがあるぞ。確か魔王様を討った者は不思議な術ですべてを消し去った、と。風体が、似ている――」

「魔王様の呪文すら無効化する、という報告もあった……」

「そ、そんなものは誇張された噂にすぎん! あるいは報告の者がキチンと事実を確認せずに、いいかげんなことを言ったとかな!」


 新・魔王軍の連中は恐れおののいているようだ。

 まあ、世界を滅ぼそうって奴らを許す理由も見逃す理由もない。


「とりあえず――」


 俺は右手を掲げた。


「【消え去れ】」


 思念消滅攻撃を放つ。


「【シールド】!」


 魔族の何人かが俺の攻撃を察知したらしく、防御呪文を唱えた。

 が、さすがに魔王級の防御呪文でもなければ相殺すらできないのだろう。


 消滅攻撃はシールドをあっさりと突き破った。


「く、くそ、帝国にあるアレさえ回収できれば、貴様らごときに――うおおおおっ……」


 そのまま魔族たちは全員消し飛ばされた。


「し、瞬殺……!?」


 S級たちがポカンとしている。


「……とんでもない逸材が冒険者になったのかもしれんの」


 ゲオルソンさんがつぶやいた。


「あるいは――我らは歴史の生き証人となった、か……?」


 どうやらS級たちからも一目置かれる、というか畏怖されてしまったらしい。

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