4 S級冒険者

 その日は村で一夜を過ごした。


 宴の料理や酒は美味しかったし、いろんな人から感謝されたし、本当に良かった。

 その後、夜になると村娘たちがこぞって俺の寝所までやって来るという一幕もあった。


『村を救ってくださったお礼に』と、口をそろえる村娘たちから迫られた。

 まあ、俺の健康的な男性なので、その後の展開は……ごにょごにょ。


 それはそれとして――翌日になり、俺はギルドに戻ってきた。


 黒竜王討伐を報告する。


「すごい! すごすぎますよ、ロメロさん!」

「俺たちのギルドの誇りだ!」


 背後で冒険者仲間たちが歓声を上げていた。


 彼らは俺の戦いぶりを見たい、とわざわざついて来たのだ。

 あっさり勝てたからいいようなものの、最強竜種との戦いを見に来るなど、なかなかの命知らずというかなんというか……。


 そういうシチュエーションすらスリルとして楽しんでしまうのが、冒険者という人種なんだろうか。

 あるいは彼らが物好きなだけか……。


 その足で受付窓口に向かうと――、


「ロメロさんにはすでにS級冒険者昇格への検討会議が開かれているそうです」


 受付嬢が勢いこんで言った。


「S級か……」


 冒険者になって二週間。

 まさか、そんなところまで駆け上がれるとは。


「……いや、まだ検討会議だよな。気が早かったか」

「いえ、検討会議というのは形だけのもので……実質、昇級は確定です!」


 と、受付嬢。

 たちまち冒険者たちが騒ぎ出す。


「たった二週間で冒険者の頂点か!」

「こりゃ、今夜も祝賀会だな!」

「もちろん、ロメロさんのおごりでな!」

「祝賀会って普通、本人以外の人間がおごるんじゃないのか?」


 俺は思わず苦笑した。


 そもそも、昨日も村で飲み会だったんだが――。


「まあ、今回のクエストで大量の報奨金が出るだろうし、それでみんなで派手に飲むのもいいかもしれないな」

「やったぜ! さすが話が分かる!」




 俺はその場にいた冒険者たち三十名ほどを近所の酒場に招いた。


 俺のおごりで祝勝飲み会だ。

 酒場の方も忙しそうにしながらも満面の笑顔だった。


 これだけの客入りはやはり嬉しいんだろう。

 みんな喜んでいるし、地元の経済にも還元できたし、いいことずくめだな。


 ……俺の財布がちょっぴりダメージを受けたこと以外は。


「まあ、また稼げばいいか……」


 そんなふうに考えられるのも、自由稼業の冒険者ならでは。


「S級会議にも出席するんだろ? あれ、出席するだけで金貨100枚もらえるらしいぜ。いいなぁ……」

「なんだ、S級会議って?」

「ん、知らないのか」

「冒険者業界のことは、まだまだ勉強中なんだ」

「そういうところは新人らしいんだよな……実力はぶっ飛んでるのに」


 男は苦笑し、


「S級会議ってのは、名前の通りS級冒険者たちの会合さ。冒険者ランク最上級者たちの意見交換だったり、情報交換だったり、単純に親交を深めたり……そんな諸々を話すらしい」

「へえ……」

「ま、あとは世界中の冒険者ギルド運営に関しても、ある程度意見を取りまとめたりもするみたいだな」

「俺は、そういうのは分からないな……」

「まあ、出席は任意だって話だし、単に雑談目的で行くS級冒険者もいるって噂だぞ」

「よく知ってるな」

「S級はよくも悪くも俺たち全冒険者の注目の的だからな」


 男が笑う。


「注目の的、か」

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