2 Sランクモンスター討伐

「一足飛びに黒竜王のところまで行ければいいんだけどな……」


 俺はため息をついた。


 思考や認識、思念をもとにした能力である以上、『知らないものはどうしようもない』『分からないものは具現化できない』という理屈なんだろう。

 まあ、しょうがない。


「とりあえず――飛んでいくか」


 ま、それでも徒歩や馬車よりずっと楽だ。


「【飛ぶぞ】」


 俺の体がふわりと浮き上がる。


「【上空200メートルくらい】【前進】【別の指示があるまでずっと前進】」


 と、高度指定や方向指示をすると、俺はまっすぐに飛び始めた。




 飛行を続け、やがて目的の山に来た。


「【ゆっくりと着地】」


 俺は山中に降り立った。


 この山の中腹で黒竜王の目撃情報があった、っていうが――。

 飛行能力を持つドラゴンのこと、すでに移動したかもしれないな。


「ひ、ひいっ……」


 悲鳴を上げながら、数人の女が走ってきた。


「君たちは――」

「た、助けてください!」

「竜が――ものすごく大きな竜が、村を襲って……!」

「こ、殺される……!」


 村娘たちは青ざめた顔だ。


「竜は今も村にいるのか?」

「は、はい……」

「方向は?」

「あ、あっち……」


 村娘たちが震えながら背後を指さす。


「分かった。俺が退治してくる。君たちは避難していてくれ」

「退治って、まさか一人で――」


 村娘たちが息を飲む。


「大丈夫」


 俺はにっこり笑った。




 俺はふたたび飛行を発動し、村まで飛んでいった。


 まだ黒竜王はいるだろうか?


「――いた!」


 上空から村を見下ろし、そいつを発見した。

 体長は100メートル以上あるだろうか。

 竜というより大怪獣といった趣だ。


 名前の通り漆黒の鱗に覆われた竜――黒竜王が辺りにブレスを吐きまくっている。

 村の建物は吹き飛び、道はえぐれ、地面ははじけ散る。


「やりたい放題だな……」


 俺は思念で飛行を制御しつつ、黒竜王に向かっていった。


「そこまでだ」


 と、黒竜王に声をかける。


「なんだ、人間!」


 吠える黒竜王。

 すごい迫力だ。


 ……けど、さすがに魔王よりは見劣りするな。


「お前を討ちに来た」


 黒竜王に言い放つ俺。

 相手の攻撃に備え、あらかじめ集中力を高めておく。


「たかが人間が、この俺を討つだと! 笑わせるな!」


 黒竜王が笑った。


「目障りだ。消えろ!」


 そしてドラゴンブレスが放たれた。


「【防御】」


 俺は一言告げる。


 ばしゅっ……!


 ブレスは俺の体に触れる前に、何もない場所で四散する。


「えっ………………!?」


 黒竜王がポカンとした顔になった。

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