第3章 S級冒険者編

1 黒竜王

 冒険者になってから、二週間が経った。


 立て続けに討伐クエストをこなした俺は、すでにB級にまで上がっていた。

 すでにA級も間近である。


「黒竜王?」

「ああ、最強のSランクモンスターの一体だ。そいつが三日前に封印を解かれて復活したんだと」


 その日の夜、クエストを終えて酒場で飲んでいると、知り合いの冒険者にそんな情報をもらった。


「Sランクモンスターか……」

「ああ、A級冒険者が十人がかりでかかったけど、返り討ちに遭ったって話だぜ」

「A級十人でも敵わないのか……」

「S級じゃないと無理そうだな……といっても、あいつらは全員多忙だし……」

「まさか、この辺りを襲ってきたりしないよな、黒竜王……」


 他の冒険者たちがざわめいている。


「なあ、あんたならどうだ、ロメロさん?」


 冒険者の一人がたずねた。


「ロメロさんなら、もしかしたらS級に匹敵するんじゃないか」

「いや、いくらロメロさんでも……S級は化け物ぞろいだからな」


 などと、冒険者たちが口々に話す。


「……やってみるか」


 俺はぽつりとつぶやいた。


 まあ、魔王より強いってことはないだろう。さすがに。

 たぶん。


「ちょっと試してくる」

「おお、それでこそだぜ!」

「がんばってくれ、ロメロさん!」

「黒竜王を倒したら、ヒーローだぜ!」


 周りが囃し立てる。


 すっかり観戦者気分だな。

 俺は内心で苦笑した。




「黒竜王を討伐する? だめですよ、そんなの!」


 翌日、ギルドの窓口に行くと、速攻で却下された。


「どうして?」

「Sランクモンスターは基本的にS級か、あるいはギルドの許可を受けたA級にしか討伐できません」

「そこをなんとか」


 俺は頼みこんだ。


 昨日の酒場で大勢の前で宣言した手前、「やっぱりだめでした」はどうにも格好がつかない。

 それに俺自身、この能力を試してみたい気持ちが強かった。


 魔王よりは弱いかもしれないが、最強クラスのモンスターを相手に――。


「しかし、ロメロの実績はすさまじい。冒険者になりたてで、もうA級寸前だ」


 初老の男がやって来た。


「あんたは――」

「ここのギルドマスターを務めている者だ、ロメロ」


 と、告げるギルドマスター。


「今の時点でもあっという間にB級になったことだし、準A級といっていいだろう。特例としてSランクモンスターの討伐を認めてもいいかもしれん」

「いいんですか、マスター」

「ああ、これで黒竜王を倒せたら、A級どころかS級認定候補になるだろう。そうなれば、我がギルドからS級が出るのは三十年ぶり……くくく、マスターである私の株も上がる……爆上がりだ……!」


 なんか自分の野心とか名誉欲みたいなものがダダ漏れだけど。

 まあ、討伐を認めてもらえるのはありがたい。


「じゃあ、いいんですね? 黒竜王に挑んで」

「もちろん。存分にやって来てくれたまえ」


 よし、マスターの了承を得たぞ。

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