8 四人の乙女の動向1《聖女たちSIDE》

 魔王ディルダインを討った四人の乙女――聖女セラ、勇者マリン、剣聖エルザ、賢者シーリス。


 麗しき救世の乙女たち――。


 そんなふうに称えられながら、セラたち四人はキリア王国に凱旋した。


 ここは一年前、女神ヴァルファリアから神託を授けられた場所である。

 セラたちはそれぞれが聖女や勇者といったジョブを授かり、魔王退治のパーティとして出発したのだ。


「魔王退治の英雄!」

「救世の乙女たち!」


 今は王都をパレードで回る最中だ。

 大通りを埋め尽くした民衆から熱狂的な歓声を受けていた。


「きゃー、素敵!」

「セラお姉さま、こっち向いて~」


 王都の少女たちは憧れの視線を向けてくる。


 セラは優雅に微笑み、群衆に手を振った。

 が、心の中にモヤモヤとしたものが生まれていた。


「本当に魔王を倒したのは、私たちじゃないのに……」

「セラ?」


 隣のマリンが怪訝そうにこちらを見た。


「だって、魔王を倒したのはあのオッサンでしょう? 私たちは手も足も出なかった……それどころか屈服してしまった」

「よしてよ。そのことはもう言わないで」


 不機嫌そうにそっぽを向くマリン。


 魔王に敗れ、その配下になろうとしたことは思い出したくもない忌まわしい記憶だ。

 今でも屈辱感が残っている。


 そして――それをロメロに救われたことも。

 感謝よりも屈辱の方がずっと大きいのだった。


「しかも、あの男に土下座したり、キスしたり……ああ、もうっ」


 記憶がよみがえってきて、頭をかきむしりそうになった。


『服従』した直後は、なぜか頭がポーッとなってしまい。本当に彼に身も心も捧げたいような気持になっていた。

 が、時間が経つにつれて、その気持ちは薄れていき、冷静さが戻ってきている。


 同時に、忌々しい気持ちも、だ。




「ようこそ、四人の乙女たち!」


 城では同世代の少年や、もう少し年上の男たちが出迎えてくれた。


 いずれも端麗な顔立ちだ。

 地位も王族や貴族、あるいは名だたる剣士や魔法使い――。


「あなたにお会いできて光栄です、聖女セラ様」


 そのうちの一人がセラに歩み寄ってきた。

 きらびやかな衣装を身に付けた美男子だ。


「私はガルガント王国の第一王子、フェルナンドと申します。以後お見知りおきを」


 セラの手を取り、その甲に口づけする。


「……セラ・リファイルと申します。お会いできて光栄です、殿下」

「光栄なのは私の方ですよ、セラ殿。いや、噂以上にお美しい」


 フェルナンドは情熱的な視線をセラに注いでいた。


「まあ、そんな……」


 セラは会釈を返しつつも、表情がわずかにこわばるのを抑えられない。


(あいにく、私は婚約者がいるのよ。あまり馴れ馴れしくされると、後で問題になるかもしれないじゃない)


 セラは内心でつぶやいた。


 聖女のジョブを授かる前、セラはある国の高位神官だった。

 婚約者は同じ国の第三王子だ。

 ロメロとキスをしたことは、彼には伏せておかなくてはならない……。


「世辞ではありませんよ、セラ殿。あなたは本当に魅力的だ。このフェルナンド、一目で虜になりそうですよ」


 と、彼女の手を放そうとしない。


 顔を近づけ、ジッと彼女の顔を覗きこんでくる。

 今にも唇を奪われるのではないか、と心配になるくらいに距離が近い。


「お戯れを、殿下……」


 セラは笑みを浮かべたまま、なんとかやり過ごそうとした。


(むげに断れないし……参ったわね)


 困りつつも、一方で心地よさも感じていた。


 婚約者がいるとはいえ、一国の王子からそういう目で見られることは、女としての自尊心をくすぐってくれる。


「フェルナンド殿下、お気持ちは分かりますが、美しい聖女様を独り占めするのはご遠慮いただきたいですね」

「私たちもセラ様にお近づきしたい気持ちは同じですよ」


 と、何人もの男が周囲から歩み寄った。

 タイプこそ違うが、いずれもフェルナンドに勝るとも劣らぬ美形だった。


 ふと見れば、マリンやエルザ、シーリスにもそれぞれ何人もの男が群がっている。


「ふふ……」


 マリンがニヤリと笑って、男たちを見回していた。

 自分の好みに合う男を物色しているらしい。


 エルザは男たちからその美貌や魔王退治の功績などを褒めたたえられているらしく、うっとりした顔だ。


 そしてシーリスは冷然と男たちを見つめていた。

 彼女の場合はあくまで冷静に、男たちが自分にとって利用価値があるかどうかを見定めている感じだろうか。


 三者三様の態度ながら、全員がモテモテ状態なのは確かだった。



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