7 討伐達成ラッシュ

「そ、そうだ、急用を思い出した。それじゃあ!」


 言うなり、俺は走り出した。


「【五倍速でこの場から離脱】」


 思念を込めて脚力を五倍にする。

 あっという間にオフェリアを引き離した。


「ふう……魔王戦より焦ったな」


 彼女が追いかけてこないことを確認し、ようやく一息ついた。


 冴えないオッサンそのものの人生を送ってきた俺にとって、あんな熱烈にアプローチされたこと自体が初めてだ。


 ドキッとはしたが、さすがにオフェリアとパーティを組みたい気持ちはなかった。

 初対面のときの態度――きっとあれが本性だろうし、ちょっと打ち解けられそうにない。


「とにかく、俺はソロで冒険者としてやっていくぞ」




 翌日から、俺は主に討伐クエストで生活費を稼ぎ始めた。


 ゴブリン退治の要領で、現場まで飛行しては狩り、また次のクエストを受けては、飛行して狩り……を何度も繰り返した。


 モンスター退治は一言発するだけで簡単に終わってしまう。

 楽な作業だった。


 気がつけば、達成件数は二十件を超え――掲示板に張り出されためぼしい依頼が少なくなっていた。


「やりすぎたかな……」


 つぶやいたところで、俺に向けられる視線に気づいた。

 それも一つじゃなく、複数の視線だ。


「おい、俺たちがやろうとしてたクエストなくなってるじゃねーじゃ……」

「あ、俺たちのも……いつのまに……」


 ま、まずいぞ。

 他の冒険者たちが恨みがましい目で俺を見ている――。


「悪かったよ。報酬はあんたたちで山分けしてくれないか?」


 とっさにそう言った。


 まあ、生活資金は思ったより簡単に稼げそうだし、ちょっと還元しておくか。

 彼らは同業者で、仲間だ。

 持ちつ持たれつでいこうかな。


 たちまち歓声が上がった。


「あんた、最高だ!」

「っていうか、一体どうやってこんなに大量のモンスター退治を?」

「見たところ、武装もしてないみたいだけど――」

「へへ、その辺りは酒場でじっくり聞かせてもらおう」

「そうだな、今日の宴の主役はあんただ……えっと、名前を聞いていいか?」

「ロメロだ。ロメロ・ティーゲル」


 冒険者の一人に聞かれ、答える俺。


「よし、行こうぜ! ロメロ」


 たちまち、その場の冒険者たちと旧知の友人みたいな雰囲気になってしまった。


 うん、こういう雰囲気も悪くない。


 女に迫られるより、こうやって男同士で騒いでる方が、精神的に楽だな……。

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