4 討伐勝負……というか、勝負にすらなってない件

「そうだ、南の森まで一瞬で移動したりできないかな」


 何もない場所から食べ物を出せたんだから、瞬間移動もできそうな気がするぞ。


「【南の森まで移動する】」


 告げたが、何も起きない。


「あ……これって【美味い料理を出してくれ】って願ったときと同じか。ある程度具体性がないと実現しないんだな」


 俺は南の森については行ったことがないし、よく知らない場所だ。

 だから鮮明なイメージができない。


「瞬間移動は俺が見知った場所じゃないと難しそうだな。さすがに万能ってわけにはいかないか。いや、十分チートだけど……」


 一定の制約はある、ということだ。


 が、逆に言えば、その制約さえクリアすれば、まさしく万能――。


 俺は思念を強めた。

 ゴブリンがいる『南の森』には行ったことがないから、一足飛びにはたどり着けない。


 だけど、手はある。


「【上空二十メートルを飛行する】」


 唱えると同時に、俺の体が浮き上がった。


「【俺の意思のままに飛行速度やルートを変更できる】【別途指示があるまで前進】」


 また唱える。


 同時に、俺は空中を進みだした。

 みるみる加速していく。


 鳥を置き去りにして一気に翔ける。

 あっという間に南の森にたどり着いた。


「【飛行停止】【ゆっくりと地面に降りる】」


 唱えて、森に降り立つ。

 しばらく進むと、ゴブリンの集落を見つけた。


「悪いけど狩らせてもらう」


 俺は思念を強める。


 放っておけば、こいつらは際限なく人間を襲う。

 ここで退治しておかなければならない。

「【お前たちを駆除する】」




 一通り倒し終えると、俺はゴブリンの耳をナイフで切り落とした。

 全部で五十体分ある。


「……意外と重いな」


 なんとか革袋に全部入れる。

 それから元の町まで飛んだ。


「ただいま」

「へっ!?」


 さっきの冒険者たちはまだ出発していなかった。


 ロビーに併設された喫茶店で食事をとっている。

 もしかしたら、余裕で勝てると思って、くつろいでいたんだろうか?

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