2 食事の具現化と、楽々移動

「腹減ってきたな……そうだ、この力で食事を作ったりできないかな」


 俺はふと思いついた。


「【美味い料理を出してくれ】」


 言葉に念を乗せ、告げる。


 一秒経過。

 二秒経過。

 五秒経過。

 十秒……。


「……あれ、何も起きないな?」


 何か発動条件を満たしてなかったんだろうか。

 たとえば、声が小さかったとか、不明瞭だったとか?


「【美味い・料理を・出してくれ】」


 今度はさっきより大きい声で、はっきりと発生してみた。


 一秒経過。

 二秒――と、十秒以上待ったけど、やっぱり何も起きない。


────────────────────────


【リアライズ】するためには対象の姿、属性、内容などを具体的にはっきりと思い浮かべる必要があります。

 ある程度鮮明なイメージでなければ、具現化することはありません。


────────────────────────


「具体的に……ある程度鮮明なイメージ、か」


 さっきのは漠然と『美味い料理』を出してほしい、と願ったから、スキルが発動しなかった、ってことか。


「じゃあ、もっと具体的にイメージを固めれば、作ることができるのか? ……【牛肉のステーキ】【ポテトサラダ】【エール酒】――これでどうだ」


 言った瞬間、


 ぽんっ。


 前方で白煙が立ち、言葉通りにステーキやサラダ、酒が現れた。


「食事は自給自足でまかなえるな、これ……!」


 俺は驚きつつも、さっそく生み出した料理を食べた。


「うん、普通に美味い」


 素材のうま味が活かされていて、味付けも絶品。

 ただ料理が出てくるだけじゃなく、一流シェフが作ったかのような味わいだ。


「ある程度鮮明にイメージできさえすれば、思ったことがなんでも叶う……って冷静に考えると、かなり超越的チートだよな……」


 だからこそ『超越者』ってわけか。




 食事を終えた俺は、さらに進んだ。


 ……が、だんだん足が疲れてきた。


「ずっと歩き詰めだもんな……待てよ」


【リアライズ】で身体能力を底上げできないだろうか。

 試してみよう。


「【脚力をアップさせてくれ。どれだけ歩いても疲れないくらいに】」


 とたんに足の疲労感が消えた。


 しかも両足に爆発的な力が宿った気がする。

 今なら、獣よりも速く走れそうだ。


「軽くダッシュしてみるか」


 だんっ!


 地面をちょっと蹴ったつもりだったが、それだけで俺の体は矢のように飛び出した。


「うおおおおおっ、なんだこれ!?」


 一時間で数百キロも走れそうな速度だった。

 わずか三分ほどで俺は近くの町にたどり着いた。


 当然、疲労はゼロ。


「……とりあえず、移動は楽になったな」

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