7 美少女たちを服従させる儀式2

「次は……手の甲と唇にキス、だ」


 数えきれないくらい嫌な思いをさせられてきたが、四人ともとびっきりの美少女であることに違いない。


 キスするとなると、甘酸っぱいときめきを覚えるような、かといって嫌いな相手であることに変わりはないし……。


 なんとも複雑な気持ちになってしまう。


「ううう……ロメロごときにキスなんて絶対嫌ぁ……その辺の男に片っ端からキスして回る方がまだマシだわ」


 悔しそうにしながらも、セラは覚悟を決めたように俺と向かい合った。


「いい? これは儀式だから仕方なくやるのよ。勘違いしないでよね」

「分かってるよ。俺だって別にしたいわけじゃない」

「なっ! あんたごときが、この私とキスできるのよ! 光栄に思いなさい!」

「そう言われても……」

「とにかくっ、いくわよ!」


 セラが顔を近づけてきた。


「んっ……」


 俺の唇にかすめるようなキスをする。


────────────────────────

 ノーカウント。

 口づけは十秒以上続けること。

────────────────────────


「……だそうだ」

「ぐぬぬぬぬ」


 セラは顔を真っ赤にして俺をにらんでいた。

 心底嫌そうな顔だった。


 ……まあ、そりゃそうか。




 ――というわけで、四人とも嫌そうにしながらも、俺の手の甲と唇にそれぞれキスを終えた。


 セラは恋人との間で経験があるようだし、マリンに至っては恋多き女で何人もの男に唇を許している。

 また、シーリスもそれなりの男性経験があるようだ。


 ただ、エルザだけはファーストキスだったらしく、四人の中で一番嫌そうにしていたな。

 キスするときに、俺をすごい目でにらんでいた。


 さすがに罪悪感を覚えてしまった。


 ただ、四人の様子には変化があった。


「英雄ロメロ様……私たちは全員、あなた様のものです」


 セラたちが声をそろって言った。


 全員が頬を染め、上気した顔で俺を見つめる。

 もしかしたら服従の儀式を終えたことで、四人の心情にも何らかの変化がもたらされたんだろうか。


 さっきまでの、俺に対する敵意が明らかに消えている。

 代わりに、まるで俺を崇めるような……あるいは、恋焦がれるような雰囲気さえ感じる。


 うーん……なんとも居心地の悪い空気だ。


 こいつらに今さら好かれてもな……。


「今さら、俺に猫なで声を使っても無駄だ。お前たちが俺にやって来たことを忘れるとでも思ったか」


 俺は深いため息をついた。


「あくまでも魔族化を止めるために服従させただけだ。もういいだろう。俺は一人で行く」

「そんな! 私たちを置いていかないでください!」


 セラがその場に両手両膝をついた。

 地面に頭を擦り付けて懇願する。


「お願いします、ロメロ様!」


 マリンやエルザ、シーリスも同じように土下座した。


「私たちのような美少女四人が全員あなたのものになるんですよ? 何が不満なのですか」


 と、セラ。


「確かにお前たちは美しいよ。けど、それは外面だけだろう。内面の醜さを俺は嫌というほど見てきたんだ」

「ぐっ……」

「俺はこの力を使って、自分に何ができるのか、自分が何者になれるのかを知りたい。だから、ここからは俺一人で行く。年甲斐もない話だけど――冒険がしたいんだよ」


 幸い、魔王を倒して、世界の危機ってやつも去ったしな。


 俺はもう荷物持ちじゃない。

 そう、一人の冒険者として――世界中を駆け巡ってみたい。


「じゃあな」


 俺は四人を振り返らず、進み始めた。


 新たな人生の、一歩だ。



※ ※ ※

次話はなろう版にはなかった新規エピソードになります。

以後も、なろう版になかった話をちょくちょく入れていくかもしれません。

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