第341話 ひっ!
恵は、そのころ・・・・。
急行「球磨川2号」熊本ゆきの車中で
のんびり寝ていた。
温かいディーゼルカー。
床下にエンジンがあるから、なんとなく温かいのだ。
夏は暑いが(^^;
通りかかった車掌・・・顔見知りである(^^)。
「あら・・・・めぐちゃん、寝てるわ・・ちょっと、からかってやろう(^^;」
耳の下を、人差し指で、ちょい(^^)。
恵は「ひっ!」と、飛び起きて。
「おのれ!曲者!この紋所が目に入らぬかー!」と、
懐の「鉄道巡査証」 葵ならぬ菊のご紋を出して。立ち上がる。
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お兄ちゃんは、EF81-137の運転台で。
鉄道無線を聞いていた。
出発信号は既に、青。
ターミナル側線から、本線への進入信号。
信号現示、よし!。
時計を見ていた。
11時・・・・05分。
「137レ、定時、出発、進行!」と、指差呼称。
機関車単弁を緩め、ゆっくり前進、1ノッチ、すぐに0。
編成ブレーキを緩める。
電磁直通弁ではなく、空気弁。
編成の前から、空気が抜けて
序々にブレーキが緩んで。
すこーしづつ、連結器ばねが緩む。
わずかな連結器隙間が延びるのだ。
こうすると、客車がショックなく進む。
夜行寝台など、人が乗っている深夜などは特に注意である。
空気が、編成全体抜けるまで時間があるので
その間は進まない。
あくまで勘である。
勾配なら、停まる前に連結器ばねを伸ばしておく。
客車牽引の鉄則であるが、芸の類である。
衝撃なく発進できた。
体に感じられるのである。
ノッチを1に戻す。
「速度、20!」
ノッチを2にする。
客車だから、ゆっくり、ゆっくり・・・・。
機関車がポイントを渡る。
足もとで、かたかたこと、かたかたこと・・・。
EF81なので、6つの車輪が渡る。
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ふたたび、急行「球磨川2号」・・・。
「おのれ!曲者!この紋所が目に入らぬかー!」と、
飛び起きた恵は
黒いスーツ、赤いワンポイント。
つばめの意匠。
丸い帽子。
タイトスカート。すらり、長身。
日焼けした顔、すこし茶色い髪、セミロング。さらさら。
白い歯を出して、ニカっ、と笑う。
「なんだ、裕子か、おはよう」と恵。
裕子は「おはようじゃなーい。何時だとおもっとる!」と。
恵は座席に座って「非番だよー」
裕子は「みりゃわかるよ。どこ行ってきたの?」
列車は、かたかた・・・かたこん・・軽快に球磨川沿いを下っている。
恵「人吉温泉」
裕子「へー、いいねぇお気楽さん。」と、にっこり。「んじゃ、仕事する」
恵「いっといでー。」と、手を振って。
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その頃、豊肥本線・・・宮地駅に
快速「SLあそBOY」は、到着する。
蒸気機関車なので、ゆっくりゆっくり。
シリンダ弁を開き、蒸気弁は閉じ、機関車ブレーキにも出来るが
機関車が大正11年製造と古いので、それを使わない。
クランクピンを保護する為、である。
ゆっくり、ゆっくり減速して、最後に機械ブレーキ。
き・・・・きききき・・・・。
編成は、宮地駅に着く。
「つーいた!」と、友里絵はバッグを持って。
「降りよ」と、廊下をとてとて・・・2号車のさかまゆちゃん、ともちゃんのとこへ。
「んじゃ、リッチモンドで待ってるねー」と、友里絵、にこにこ。
さかまゆ「はい」(^^)。白い頬に掛かる髪が、なんとなく雰囲気がある。
ともちゃんも、にこにこ。笑うととっても可愛らしい。幼い子みたい。
とてとてとて・・・・と。3号車に戻ろうとして。
由香にぶつかった☆(笑)。
「いったーい、なにすんのぉ」
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