第300話 17仕業、帰着!異常ありません!

貨物ホームなので、一応はプラットホームがある。

広い貨物駅。構内は

フォークリフトが、日中は走り回っているが

夕方のこの時刻、編成は終えて

がらん、と。埃っぽい広さだ。


そのうち、交替の機関士がやってくる。


ご苦労様、と敬礼で交替。


乗務中異常なし、と。


引き継いで。


赤い機関車は、これから、九州を駆け抜けて。

門司でEF30に付け替えられるまで走るのだ。





お兄ちゃんは「やれやれ、無事終わったな」と、一安心。



これから、機関区で帰着点呼を受けて解放である。


「明日は、公休日だったな・・・・。」






友里絵たちは、高森線のふるーいディーゼル・カーに乗り込んだ。


一両だけ。バス、みたいな雰囲気で

ドアも折り戸。

ステンレスの車体。


運転士さんは、白髪のおじいさんで

高森線のベンチで、煙草を吸っていた。


あーあ・・・と、伸びをひとつ。


ローカル線なので、おそらく・・・は。長い時間の勤務なのだろう。

朝早く、よる遅い。


昼間は寝ている(笑)。



のーんびりしている、どこかのわんこみたいな生活である。


駅のアナウンスが、駅員さんの声で「高森線、まもなく発車です」と言うので

運転士さんも車両に乗り込む。


エンジンは掛けたままなのでクーラーが効いている。


九州は暑いのである。


夕方とあって、そこそこ高校生らが乗ってきていて。

でも、座るところはありそう。


愛紗たちが乗ってくると・・・女子高生たちが

ボックス席を2人で乗っていたのに


「あ、ここどうぞ」と。譲ってくれる。

自分たちはベンチのようなながい椅子の方へ。



ありがとう、と菜由。



にっこりの彼女たち。



「いいね」と、愛紗。


菜由は「うん。子供はこういう所で育てたいなーって。それで思うの」


愛紗は「そうだね。」とは言いながら、子育てなんて考えた事もなかった。

同じ年の菜由は、ずっと大人だな、そんなふうに思って。


由香が来て「友里絵は?」


菜由が「こっちには来てないよ」


由香は「なーにやってるんだろ、あいつ。出発するぞ」


と、ホームに下りた。


由香は、すこし暗いホームの電球の灯りの下で「ゆりえー、出るよ」



友里絵は、セブンティーンアイスの自動販売機の前で。「ここー」


由香が「出るよ」


友里絵は、寝てた猫を可愛がってて。よしよし。


猫も懐いてる(^^)。


なにゃ、なお、と・・・猫語で話している友里絵。」


猫も、なんとなくお返事。


由香が、友里絵を引っ張って「行くぞ!」


友里絵は「あーん、行くときは一緒ー。」



由香「ギャグは忘れんなぁ」と。笑いながら

車内に引きずり込んだ。


猫もついてきた(笑)。



友里絵が「あ、来ちゃダメ。降りないと」と。言ってたら

運転士さんが来て、にこにこ。


「ああ、大丈夫。その猫、よく乗ってるから。」と。


友里絵は「そうなの?」


白髪の運転士さんは、日焼けの顔で「そう。ノラだけどね。あちこちの駅で

寝てるね」


猫もなれたもので。とととと・・と、歩いて

運転席の隣の窓の下、出窓みたいになっているところに

ぴょん。

そこで寝転がった。


「あそこが指定席か」


近くにいた学生たちが、可愛がっている。撫でたり、よしよし、したり。


野球部らしい、丸刈りの男の子が数人。

なんか、パンの残りを出して「ほれ、食うか?」なんて。



菜由は「のどかでいいね」

愛紗も「うん」


女子高生のひとりが「らら、らら、ららー。」と、友達の名を呼んで。


ららちゃん、と呼ばれた子は

一年生だろうか。ふんわりした丸顔の子で。

とてとてとて・・・と歩いて。友達のとこへ。


友里絵は、愛紗たちのところへ来て。「あー、くたびれた」


由香は「年だ年」


友里絵は「えー、わたくし、体力の限界を感じ、引退します!」


由香「ヘンタイしますだろ」


菜由は「はははは」


愛紗は「なんか、似合わない感じ。ここに」


由香「ホント」(笑)。


健康的な、高森線である・・・・。





18仕業、帰着。異常有りません!と、恵は

熊本車掌区で、帰着点呼。


指令は、皺嗄れた声で「ご苦労さん」


真由美ちゃんは、車掌区の入り口の長椅子。

ビニール張りで、足が4つ出ている、よくあるタイプの椅子に

ちょこん、と座っていて。


時折通る人に、真由美ちゃん、どうしたの?とか。

お休み?とか聞かれて。


「恵さんと一緒に、帰るの」とか言うと

みんな安心して。


「そう、それなら良かった」と・・・。にこにこ。



恵が戻ってきて「あー、お待たせ!。でも、お兄ちゃん遅いね。まだ着いてないのかな?」

と。さっぱりした顔で。

帽子を取ると、若干は年齢なりに見える。


車掌ルックの、男子と同じ制服の時はスカーフが無いので

より、凛々しい。


真由美ちゃんたちは、スカーフにCAルック、と

やや、柔らかい印象。



「機関区に行ってみようか?」と、恵。


「お兄ちゃんは駅で待って、と言ってたし・・・夜は危ないから、と」真由美ちゃん。


そう、機関区は構内から線路沿いを歩くので・・・・。夜間は慣れないと危険。

夕方の時間は、通勤電車が多く往来するので

事故の危険もある。



「じゃ、指令室で見てこよう」列車運行がCTCなので、どの列車がどこに居るかは

ディスプレイで見える。

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