第259話 昭和レトロ

ふるーい、日本旅館のようなKKR人吉は、ちょっと愛紗たちの

想像と違っていた。


「レトロー」と、友里絵。

「なんか、懐かしいね」と、由香。


菜由は「なんか、帰ってきたような気がする」

愛紗「ほんと」


真由美ちゃんは、キッチンの方へ行ったのだろうか、姿が見えない。





真由美ちゃんは、とことこ・・・と、外からキッチンへ。


「おばーちゃーん」と、キッチンの外の窓から。


網戸になっているキッチンの窓の向こうで、三角巾に割烹着のおばさんが

にっこり「おー、真由美ちゃん、来たね。」



真由美ちゃんは「うん。今日ね、早く終わったから。お友達が出来て。

ここに泊まるの。」


おばあちゃんは目を細めて「そっか。ごちそうするね」と。がっしりとした体格の

優しげなお顔。



真由美ちゃんは「ありがとー。」と。

また、とことこ・・・と、玄関の方へ。





友里絵たちは、靴を脱いで、下駄箱に入れて。

「なんか、なつかしいね、こういうの」


由香は「ほんと、学校に帰ったみたい。」

大分で買った、新しい靴も

だいぶ馴染んできた。


愛紗は「なんか、帰りたくなってきちゃったな」


菜由「帰る?」


愛紗は、ふと、転職問題を思い出して、かぶりを振った。

そうだった、そのお話はまだ・・・・そのままだった。




真由美ちゃんは、とことこ、と帰ってきて「ただいまー」


友里絵はにこにこ「おかえりー。おばあちゃんに会って来たの?」


真由美ちゃん、こっくり。


由香「やさしいおばあちゃん、いいね」


真由美ちゃん、にこにこ「はい」



友里絵「おばあちゃんに会いたくなっちゃったな」


由香「おばあちゃんの家だっけ」


友里絵「そう。家狭いから。あたしは、小さい頃おばあちゃんっ子だったし」



友里絵は、幼い頃

おばあちゃんに、よく、遊んでもらっていた。


お菓子の好きな友里絵が、お菓子をこぼしたりすると・・・・。



おばあちゃんは「お菓子の好きな、ありさんが来るわよ」と、にこにこ言って。

こぼれたお菓子を拾ってあげる。



友里絵は、じーっ、と。待ってて。


おばあちゃんが「なに、してるの」と、尋ねると。



友里絵は「ありさん、くるかなー」と。


待っている。



おばあちゃんも、友里絵につきあって


待っててあげる。

「ありさん、こないねー。」と、にこにこしながら。



そういう、のーんびりしたおばあちゃん。



「じゃ、お部屋行こうか」と、愛紗。


「そだね」と、友里絵。

「よっこいしょ」と、由香。


「おばさーん」と、友里絵。

「うるさい」と、由香(^^;


愛紗も「はぁ」

菜由「疲れた?」


愛紗は「ちょっとね」

玄関に立ってる真由美ちゃんを見て


「お茶飲んでったら?」と、愛紗。



真由美ちゃん「はい!」と、にこにこ。



階段は、なーんと木造。無垢の木が

玄関の中から、でーん、と二階に向かって。

柱は、丸太を磨いたような。

床も、磨きこんでつるつるになっている木材。


硝子の大きな窓が、玄関の真向かいにあり

縁側に革のソファーと、切り株のテーブル。


廊下が長く。奥が食堂で

階段を下って、温泉がある。


川沿いに、大広間がある。


お部屋は、と、菜由が聞くと


愛紗は「二階よ」



その、重厚な階段を昇っていく。


友里絵は「ちょっと怖いかも」


由香「下が丸見えだし」


「きれいなパンツはかないと」と、友里絵。


「あほ」と、由香は張り扇ちょーっぷ。(ないけど)。


乙女ちゃん用に、普通の階段も

フロントの裏にあって。


真由美ちゃんはそちらから(^^)。



2階の、川に沿ったお部屋。

203、と。真ん中らしい。


結構年季が入っていて、あちこち軋んではいるけれど。

お部屋は和室。12畳かな。

川のほうのサッシには、全面網戸。

障子が作りつけ。

天井は、木目で。


「昭和だー」と、友里絵。


「ほんと」と、由香。


愛紗は、硝子戸を開けようとした。


真由美ちゃんが「あ、ダメ!開けないで」


愛紗は、びっくりして手を止めた。


菜由は「どうしたの?」



真由美ちゃんは「虫が多いから。入ってきちゃいます」


愛紗は、全面網戸の意味がそれで解った。



この辺りは、どういうワケか羽虫が多いようで

良く見ると、川面に一杯、雲のように纏まっている。



友里絵「びっくりだね」

由香「まあ、大岡山にもいるけどさ。あんなにはいないね」


菜由は「自然が一杯って事だね」


友里絵は「羽虫ルイ」


由香「ふつーの人に判らんギャグはよせ!」と、平手で、ペチ。



「じゃ、お茶いれよ」と、菜由。


真由美ちゃんは「あたし、やります」


昔なつかしい、魔法びん。

白いホーローに、花柄で

ステンレスのくちばしが、突き出ていて、傾けて注ぐタイプ。


「これ、なつかしい」と、菜由。


愛紗は「家にあるよ、まだ」


由香は「骨董品だ」

友里絵「つっつきたくなる」


由香「やめろって、そういう想像」



友里絵は、にかっ、と笑う。


「お湯もってきます」と、真由美ちゃん。


「どこにあるの?」と、菜由。


真由美ちゃんは「給湯室です」



国鉄の保養所なので、なんとなく宿舎みたいな感じで

廊下の真ん中に、トイレと洗面所があって。

隣に給湯室があったりする。

ガス湯沸しがあって。




真由美ちゃんは、ポットを持って。

ゆすってみる。「入ってますね、でも、熱いほうがいいから」と、

ポット持って、お部屋の玄関から出て行った。



「今日は遊んだねー」と、友里絵。


愛紗「ほんと。ローカル線の旅も出来たし」


菜由も、ちょっと疲れ顔「年取ったなぁ」


友里絵は「運動不足だよん」



由香「運動してんの?」


友里絵は「あちょー!」



由香「そっちか」(^^)。「まあ、元気が一番な」


そだよ、と

友里絵もにこにこ。(^^)。








きょうは、結構泊まり客が居るようだけれども

ほとんど、出張のおじさんばかり。


のんびりと、広間でくつろいでいたり・・・・。


マージャン室で、じゃらじゃら。

もう、定年になったひとたちだろうか。





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