第183話 バックおーらい

友里絵ちゃんと一緒だと、楽しいな、って

愛紗は思う。


ひとりだと沈みがちな事も多いけど。



「とってもいい子ね、友里絵ちゃん」




「さ、そろそろ出ようか、ご飯だし」と、菜由。



「おなか空いたなぁ。」と、友里絵。

「そうだな、いっぱい笑ったし」と、由香。



楽しく、指宿温泉は日暮れ時・・・・。



みんな、「工」の字の浴衣を着て。


「これって懐かしいね」と、愛紗。


「そう?どっかで着た?」と、菜由。





「修学旅行の寝台車」と、愛紗。



「あ、そっかー。」と、菜由。



「えー、修学旅行が寝台車なんだ。いいなー。」と、友里絵。



由香「枕投げはできないのかな」と(^^)。


菜由「それはないなぁ。だって二段ベッドだし」



愛紗「でも楽しかったなあ、あの往復だけでも」




宮崎辺りからだと、大阪とか、京都とか。その辺りに行く事が多かったから

夜行ー>大阪・京都・奈良ー>夜行

みたいなパターンになっていた。


それはそれで、楽しいものだったろう。




友里絵は「あたしらって、修学旅行ってあったっけ?」

「あんたは中退じゃん」と、由香。「新幹線だったなぁ、京都とか」



菜由は「そうなんだ。じゃ、中卒じゃないじゃない。高校中退から専門学校卒だ」



友里絵は「あ、そうなんだ。一応高卒の資格もあるみたい」




菜由は「おー、高学歴芸人!」


由香は「芸人かい」と、笑った。





「でも、この浴衣で食堂はちょっと恥かしいかな」と、愛紗。



「どてらがあったな」と、友里絵。



「丹前だろ、ほーんと無教養だなあ」と、由香は笑う。



「泊まりのガイド仕事でさ『どてらもありますよー』なんてお客さんに言ったら

爆笑だな」と、由香。




菜由も笑う。「泊まり勤務って無かったけど」







「そりゃ、危ないからだよ。」と、由香。「野田さんとかが、止めてたの。」



「野田さん、いい人だね」と、友里絵。





愛紗も思う。野田も、安心できる人のひとりだ。

そちら側の人。




「だからさ、岩市が『タマの嫁にしよう』って、あの、前の営業課長の娘ね。

ゴジラの。あれをあてがおうとした時、野田さんが

『タマにも選ぶ権利がある』って。阻止したから

細川さんとかが、あの恵美とかをあてがおうとしたらしいね」と、友里絵。



「でも出戻りじゃあね」と、菜由。






「そそ、それでね笑い話があって。タマちゃんも、何年か前に大岡山に一旦入って。

すぐに辞めたから『出戻り』だって、自分をそう思ってて。


路線研修の時、あの恵美のバスに乗ったわけ。大型の。海岸コース。」

と、友里絵。



由香「うんうん。」




「それでね、タマちゃんは「僕は出戻りだから」と、言ったんだけど。

恵美は「出戻り?」


自分の事を言われたと思ったらしいのね(笑)。」


と、友里絵。


菜由は「そういう事いう人じゃないものね。でも、面白いそれ」




由香は「友里絵だったら「あたしもでもどりよー」って言うとこだろうけどね」


友里絵は「そうかも」と、笑う。


そのくらい、素直で開放的ならば、好まれるだろう。離婚歴があっても。




隠蔽しようとすると、却って不審に思うものだ。








「パンツどうする?」と、友里絵。



「ランドリーがあったから、みんなのまとめて入れちゃえば?」と、菜由。



「盗まれないかなぁ」と、由香。



「大丈夫だよ。あんたのふんどしは」と、友里絵。


由香は「ふんどしじゃないよ。Tバック」と、由香。



「Tバッククイーン・バスガイド」と、菜由も笑う。



「バックおーらい、バスガイド」と、友里絵。


「AVかいな」と、由香。



「発射おーらい、バスガイド」と、友里絵。



「字が間違ってるぞ、ほーんとに・・あ、いいのかAVじゃ」と、由香。






菜由は「コント、友里絵とゆか。なんて」



「語呂がいまいち。脱線トリオとか」と、友里絵。



由香は「脱線はまずいな、ここ国鉄だし。『なに、脱線!どこだー』って

おじさん達が吹っ飛んでくよ、血相変えて。ふんどしで」



「その想像も面白いわ」と、菜由。



「転覆トリオ」と、友里絵。



「なお悪いわ」と、由香。





その時、男湯の引き戸が、がらがら・・・と空いて。


湯上りのおじさんたちが、笑いながら「面白いねぇ、後でコントやってよ。脱線トリオ」


とか。




友里絵は「はは、受けちゃった」と、にこにこ。


「喜んでていいのか」と、由香。





楽しく、指宿の夜は過ぎてゆく。



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