第103話 日豊本線1列車ー9021レ 進行!

はっ、と愛紗が気づいて。

目覚めた。


列車は、速度を落として走っていた。

また、雨が降り出していて

日豊本線の辺りは、地盤が緩いので

注意深く走っているらしい。


10号個室からは、山が見える。


景色で、大体分かるけど・・・・。


「国東半島を渡る辺り、杵築辺りかな。」と。


愛紗は、「あ、そうだ。由香たちは?」

と、浴衣のまま飛び起きて。


9号室のドアを叩く。


由香と友里恵は、笑顔で「おはよー。良く寝てたね。」


愛紗は「今晩の宿、どこにしたの?」



由香は「それなんだけどさー。このままだと宮崎に着くのは夜だね。」と。


遅れが大きくなって、2時間半くらい。


たぶん・・・大分に着くのは・・・。3時くらい。



電車特急に乗り換えても、ぎりぎり。



「前泊頼まないでよかった。」と、愛紗。



由香も友里恵も、うんうん。



「ところでさ、その格好、セクシーすぎ。」と、由香。


愛紗は、はっ。と気づくと

寝乱れたままの浴衣で、パンツ丸見え(笑)

胸元露わ。



慌てて、前を隠して部屋に戻る。


幸い、廊下に誰も居らず(笑)。




愛紗は、頬染めながら「あー、恥かしかった。」



「でも・・・宿。そうだ、おばさんのトコへ泊めてもらおうかな。」と。

思ったけど。


「まあ、大分に着いてからでいいか。」

おばさんのトコなら、気兼ねは要らないし。


万一ダメでも、駅に泊めて貰えば。



駅には、乗務員宿泊所があったし

元々は、駐在駅だった。


伯母も、伯父が生きていた頃は駅に住んでいたのだ。





「まあ、由香と友里恵の好みもあるし・・・。」と


聞いてみる事にしようと、着替えてから


9号室へ。



「私の伯母がね、庄内に居るんだけど、そこでいい?」と、愛紗。



由香は「え、いいの?悪いなぁ。」


友里恵「旅カラスっぽくていいね。」


「旅からす?・・・旅烏だよ、ふつう。」と、由香。


「そっか、あはは。」と、友里恵。



「国語0点。」と、由香。



「もうないもーん、試験」と友里恵。



「ごはんは?」と、愛紗が聞くと



ふたりとも、食堂車で食べたらしい。朝は。


「おなかすいてきたね。」と、由香。



「もう、お昼すぎだもん。」と、友里恵。



「・・・もう、食堂車は仕舞ってるから、降りて駅で何か軽く・・・・。

それから、伯母さんのとこで。」と、愛紗。






「ちょっと、伯母に電話してみるね。」と、愛紗は

10号室に戻って、携帯電話を掛ける。


「駅に居るかな?」と・・・・。



そっちへ掛けて見て。



コール・・・・。


コール・・・。


かちゃり。



「あ、もしもし?」



「あれ、愛紗ちゃん。あらー。元気にしてる?」


伯母の元気な声。


「はい。元気ですー。おばさんも元気そう。」



「今、どこから?」と、伯母は楽しそう。



「寝台特急『富士』。」と、愛紗が言うと


伯母は「あれ、遅れてるでしょ。そろそろ着くんじゃない?」



駅に居るから、ダイヤ情報は分かっているのだろう。



「そう、大分に着くんだけど。伯母さんに会いに行っていい?」



「いーよ。駅にいるから、おいで。」と、伯母は声が弾んでいる。



ひとり暮らしで、淋しいのだろう。




「お友達も一緒なんだけど・・・いい?」




伯母は「いいよー。泊まるの?。女の子でしょ?」と。


愛紗が男の子を連れてくる訳がないので(笑)。




「はい。助かったー。列車が遅れてね。友達は宿まで行けないの、今夜。

それじゃ・・・5時頃になるかしら。庄内駅に着くの。」と、愛紗が言うと。


伯母は「そのくらいだね。17時・・・32分かな。離合だね。」と

駅員の感覚が自然に出ている。




「うん、ありがとー。おばさん、じゃ、後でまた。」と、愛紗もにこにこ。





電話を切って。



由香たちのもとへ。



「いいって、泊まって。伯母のとこでいい?」と、愛紗。



「うれしいなー。田舎に泊まれるの。」と、友里恵。


「これ、田舎だなんて、失礼。」と、由香。


愛紗は「田舎だもん、実際。」と、笑う。



日豊本線を、ゆっくり進む「富士」は、大分で7両編成になって

南宮崎まで行く。


でも、シーガイアに着くのは夜になるだろうから

予約をしなくて良かった事になる。


電車特急に乗り換えても、夕方までに着くかどうか、と言うところ。





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