第80話 定期観光バスの仕事

その、愛紗の夢に出てくる

町営バスは、民間委託ではないから

のんびりと、

毎日コミュニティーバスだけを運転している

けれど、給料が安い。



それなので、どちらかと言えば

女の子や、定年後のおじいちゃんの

仕事だったり。



年々、運転手が減っている

ローカル路線バスの運転手も

こういったパートタイム運転手に任せようと

言うのが、近年の傾向だった。


でも、事故を起こせば厳罰が来るのは同じなので


そういう運転手の志望者も少なかった。





なので、自治体の多くは路線バスの

会社に委託する。



例えば、熊本の南阿蘇村辺りは

九州産交バスに委託していたりして


運転手の収入確保で

観光バスを仕事に組み入れる乗務だったりもする。




つまり、12m車両を普通に乗れる

人なら収入も増えるが



コミュニティーバスだけでは、あまり収入にはならない、なんて言う現実もあった。




安全を守る仕事なのに、収入にして

時給で1200円くらいでは


あまり、魅力のある仕事でもなかった。




派遣社員とかで、事務をしても

そのくらいは貰えるから



田舎で、仕事がない所位でないと


運転手のなりても無かったりする。





まあ、夢の中でも

そんな事を考える愛紗は


少し、滅入っていたのだろう。




ふと、目覚めると


愛紗の乗った寝台特急富士は、まだ

用宗駅に停まったままだった。


この駅は、本線上にあるから

ずっと、東海道線は停まったまま。




廊下を歩く音がして、何気なく気づく。




1時間くらいは停まったままなのだろうか。



「このまま、運転打ち切りかしら」




愛紗は、元々バスガイドだから


そういう経験もある、



観光バスが、道路渋滞や、天災などで


観光コースを回れなかったりして


空港や駅に行かなくてはならない時とか。




観光客は、得てして不満なものだ。



地震の時もそうで、ディズニーランドの

駐車場から出られずに

バスの車内で朝を迎えたりした経験もあった。



そんな時なら、まだ乗客は

我慢してくれるが



普通の道路渋滞や、事故渋滞などの時は



結構、我が儘を言う人も居たりした。





「楽しみにしてたのに」




「なんとかならないの」




そういわれても、答えようがなかったりするのも

正直な所だった。



バスガイドだって、帰りたいのだ(笑)





そんな回想を含め、この


寝台特急富士の、車掌さんに




先行きの見通しを尋ねる気にもならなかった。




聞いても仕方ないのだ。

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