第70話 熱海到着

そろそろ、夕方になってきて

夜行列車らしい雰囲気になってきたな、と

愛紗は思う。


「ま、そんな感じ。だから、あんまり深く考えないでさ。

危ない事はしないほうがいいけどね。そうそう、九州なら

定期観光バスなんかもいいかもね。

若い女の子なら、まあガイド経験があるんだったら

それもいいんじゃない?どこへ行っても使ってくれるよ。

鉄道の制服着たいだけだったらさ、客室乗務員ってのもあるよ。

あれなら事故処理ってないしね。」

と、山岡。



愛紗は「はい。客室というと、ワゴンサービスと、切符とか客扱い」




山岡は「そうそう。あれも制服は一緒だし。まあ、観光列車なら

セクハラもないだろうし。」



女って不便だと思う。そういうあたり。



山岡は笑って「まあ、いつかババアになってからでも遅くないよ。

路線バスなんて。お肌にも悪いし。」



愛紗は笑って「それはわかります。」



ガイドも確かに、それで辞めていく

子も多い。



熱海で、機関士は交代。


走り出した列車の窓から見ていると

颯爽とした機関士は、大きな四角いトランクと

ハンドルを下げて。


白い手袋と制帽。


それを見ていると、カッコイイなぁと思う。


あれを着てみたいと思って。



まあ、東山の制服は着てみたけれど。





「そうそう、このあたりは東海バスでね。僕は少し居た事があるんだ。熱海営業所」

と、山岡は意外な事を言った。




愛紗は「そういうの、出来るんですか?」



山岡は「まあ、常識ではできないけどね。」


と、旅行作家らしい言い方をした。




まあ、人手が足りないから、なんとなく入れてしまうのは

ここ暫くの傾向なのだと。


「ここは、車庫が網代にあるんだね。だから、そこから走ってくるのが

最初の仕事だったりするけど。

観光地だから、シーズンはまあ、あてにならないダイヤ。

海岸通りはね、特に。花火大会もあるし。

それでみんな、他の営業所に行きたがるんで、それで、とりあえず入れるって訳。」



と、山岡は笑った。


「他に西武鉄道系の伊豆箱根鉄道もあるけど、こっちは熱海に車庫がある。

さっきの駅の東京よりにね。本社は三島。この列車は停まらないけど。」

山岡はそこも入った事があるとの事だった。




観光の募集と、路線は別で。


どちらも受けた事があるとの事。


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